ＪＯＣ杯ジュニアオリンピックのグレコローマン55kg級で３連覇を達成した倉本一真（拓大）には、笑顔がなかった。「全然いい試合ができなかった。いいところが一つもなかった。納得いかない」と肩を落とし、勝者とは思えない様子だった。とは言うものの、昨年の全日本大学グレコローマン選手権で1年生王者に輝いた倉本にとって、ジュニアに敵はいなかった。決勝の相手は昨年と同じ峯村亮（神奈川大）。第１ピリオドではグラウンド攻防を制したが、第２ピリオドはラストポイントで峯村に軍配が上がった。しかし、第３ピリオドはローリングで先制した後に落ち着いて守り、勝負を決めた。
「守れるはずのグラウンドが守れなかった。気持ちが抜けていた」。練習してきたことが活かせず、悔しい気持ちだけが残った。しかし「これからもっと練習して、すべての大会で優勝したい」と勢いは止らない。３連覇を達成したことよりも、納得できない試合内容だったことが、逆に向上心を掻き立ててくれたようだ。
高校３年生の時に本大会を制し、逸材として注目をあびた。拓大の西口茂樹コーチ、平井進悟コーチも、大学に入ってからも成長を続けていることを認めている。体も徐々に大きくなり、現在は８〜９kgの減量に耐えている。さらに、「今のルールは自分に合っている」と断言。今後に期待できる要素は十分だ。
最終的には全日本のトップと五輪出場を目指している。「まだ豊田先輩（雅俊＝警視庁）や平井先輩（前述）には追いつかないけど、追いつけるように頑張りたい」と頼もしい。６月の明治乳業杯全日本選抜選手権での活躍にも注目したい。
（取材・文＝神谷衣香）
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