【特集】「自信」を得た日大が3年ぶりの東日本制覇へ王手【2006年5月12日】
東日本学生リーグ戦が始まる前、「自信がない」と言い切った日大が、2日間が終わってみればAグループ首位。2日間を勝ち抜いたことで、松本真也主将はようやく「自信がついた」と言う。
1日目は全試合7−0で勝ち取り、圧倒的な強さを見せつけた。初日を無敗(全試合7−0)で終えたのは一部リーグ16チーム中、日大のみ。いい流れで2日目を迎えることができた。
第6試合の山梨学院大戦は66s級の高塚紀行から上5階級を制し、危なげなく勝利をおさめた(右写真=松本が山梨学院大の留学生ムジエフを破る)。全勝で迎えた最終戦の相手は同じく全勝の拓大。拓大は55s級の湯元進一、66s級の藤本浩平、米満達弘、74s級の桜井浩二、84s級の磯川孝生主将、96s級の山口竜志、120s級の中村淳志と自信の駒が揃っており、下馬評は最も高かった。
しかし日大にも松本主将はもちろん、60s級に学生王者の高塚、注目のルーキー紋谷哲平をはじめ、74s級の秋本直樹、工藤豪己、84s級の山縣養一、96kg級の畑俊輔など、ここぞという時に力を発揮する選手が揃っている。展開を予想するのも困難な対戦だったといえる。
拓大は藤本、桜井を1階級アップで起用して勝負に出た。それに対し、日大は紋谷を60s級で起用し(左写真=紋谷が拓大・中村を破る)、高塚を66s級に上げる作戦。富山英明監督は「拓大に勝つとしたら、これしかないと思った」という。
注目のカードは66s級。階級を上げた高塚と先月JOC王者に輝いた米満の対戦だ。第1、2ピリオド共にクリンチ勝負となり、まず米満が、次に高塚が取るという完全五分の状態で最終ピリオドへ突入した。後半に入ってから米満が場外で1ポイントを獲得し、試合は決まったかと思われた。しかしその約5秒後に今度は高塚が1点を奪い、結局ラストポイントで高塚が勝利。これで日大が勢いづいた。
続く秋本は全日本選手権2位の藤本を相手に積極的に攻め、持ち前の“型破りレスリング”で見事に下した。84s級の工藤は第1ピリオド先取された後、第2ピリオドで逆転勝ちし、そのままいい流れで第3ピリオドはテクニカルフォール勝ち。その瞬間チームの勝利が決まり、会場は日大の歓喜であふれた。
級 | 日 大 | 結 果 | 拓 大 | ||
55 | 赤松 雄二 | ● | 0−2 | ○ | 湯元 進一 |
60 | 紋谷 哲平 | ○ | 2−0 | ● | 中村 弘 |
66 | 高塚 紀行 | ○ | 2−1 | ● | 米満 達弘 |
74 | 秋本 直樹 | ○ | 2−0 | ● | 藤本 浩平 |
84 | 工藤 豪己 | ○ | 2−1 | ● | 桜井 浩二 |
96 | 山縣 養一 | ○ | 2−1 | ● | 山口 竜志 |
120 | 松本 真也 | ● | 0−2 | ● | 磯川 孝生 |
「高塚が頑張ってくれたおかげ」と、富山監督も66s級の接戦を制したことを高く評価。試合の流れに加え、チームのムードもよかった。心配していた「過信」もなかったようで、むしろ「全員が『オレも頑張る』という雰囲気だった」(松本主将)という。
松本主将は「流れは維持したいが、22日の決勝戦は(この2日間とは)別のものだと考えている」。最後の120s級で松本主将が拓大の磯川主将に敗れたことも、「自分自身もチームもあれでまた引き締まった」とプラスに考えている。「もう優勝しか見ていない」と断言した松本主将。「過信」ではなく「自信」を得て、ひと回り大きくなった日大に注目だ。
(取材・文=神谷衣香)