【特集】頼もしい重量級の安定感。日体大が王座奪還へかける【2006年5月12日】
東日本学生リーグ戦Bグループは、日体大が難敵と思われた専大と早大をそれぞれ5−2、6−1に下し、ハラハラする状況になることなく1位を決めた。
とはいえ、専大戦は66kg級の横山太が0−1、0−1で落としてチームスコア1−2となり気が引き締まる展開となった。専大は96kg級に120kg級学生王者の北村克哉、120kg級に全日本2位の荒木田進謙を控えており、この2階級では確実に勝てる計算が立たない。軽量級で2階級を落としたということは、瀬戸際に追い詰められてしまったことを意味する。まして、北村と対戦する桜井紀宏は、昨年のインカレで北村に0−2で負けていた。内心、おだやかではなかっただろう。
だが藤本英男部長、安達監督は、こうした事態になっても、「まだ大丈夫」という思惑もあったようだ。84kg級に起用した門間順輝が急成長を遂げているのに加え、120kg級に起用した斎川哲克に「絶対に勝ってくれる」という確信を持っていたからだ。
斎川はグレコローマン84kg級の選手。今季は松本慎吾との競合を避けて96kg級で勝負するものの、同級としてはまだ体の線が細い。普通に考えれば、違うスタイルの、しかも2階級上の全日本2位の荒木田に勝てるとは考えにくい。
しかし2人は斎川の勝負強さにかけていた。もっとも、その必要はなかった。「負けても仕方ない」と思っていた桜井が根性を見せ、ラスト2秒で逆転勝ち(右写真=桜井がラスト2秒のタックルで北村を破る)。斎川の出番を待たずにチームの勝利を決めたからだ。「重量級は斎川に刺激されていますよ」とは安達監督。チーム内の競争が全体を底上げするという強豪チーム必然の法則によって、日体大が難関を突破した。
級 | 日 大 | 成 績 | 専 大 | ||
55 | 富岡 直希 | ● | 1−2 | ○ | 稲葉 泰弘 |
60 | 湯元 健一 | ○ | 2−0 | ● | 大山 健太 |
66 | 横山 太 | ● | 0−2 | ○ | 林田 重吾 |
74 | 種市 吉寿 | ○ | 2−1 | ● | 相内 寿 |
84 | 門間 順輝 | ○ | 2−0 | ● | 小林 敏雄 |
96 | 桜井 紀宏 | ○ | 2−1 | ● | 北村 克哉 |
120 | 斎川 哲克 | ○ | 2−1 | ● | 荒木田進謙 |
続く早大戦では、重量級の3人が安定していることが分かったからなのだろう、55、60kg級の2階級を取った段階でチーム内には勝利のムードが充満。余裕を持った闘いで昨年の王者を退けて1位を決めた(右写真=門間が大月を破ってチームの勝利を決める)。
安達監督は「重量級3人が安定しているのは頼もしいですよ」と言う一方で、「決勝戦までに中量級を鍛え直す」と、決戦に向けて気合十分。対戦相手の日大は、日体大が1979年から18連覇していた時、半分にあたる9度、決勝で顔を合わせた、いわば学生レスリング界の黄金カード。97年に日体大連覇が途切れたのは日大に敗れたためであり、いわば怨敵。
A・Bグループ制となった2000年以降でも、グループが違ってもなぜかファイナルで対戦し、切っても切れない宿敵といえる間柄だ。この6年間の対戦成績は日体大が4勝2敗と勝ち越しているものの、決勝での対戦に限れば1勝1敗。今回が決着戦といえる対戦。雌雄をかけた一戦が期待できる。
(取材・文=樋口郁夫)