【特集】55kg級・吉田沙保里がMVPを獲得、連勝記録を「96」へ【2006年5月21日】






 日本の3連覇とともに吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)の連勝記録にも注目が集まった今大会。結果は応援するすべての人に応える形となった。

 前日のシャロン・ジェイコブセン(米国)戦を第1ピリオドでフォール勝ちし、強さを見せつけた吉田。しかし最終日、予選リーグ3回戦のウクライナ戦ではナタリア・シニシナに第1ピリオド開始10秒で1点を奪われるという思わぬ展開。相手はよく吉田を研究していたようで、なかなかタックルに入らせてもらえなかった。

 しかし、「取り返さないと」とすぐに気持ちを切り替え、ペースを取り戻した。2度もニアフォールにもっていくなど本領を発揮し、終わってみれば8−1と圧勝。続く第2ピリオドは開始のホイッスルが鳴った瞬間にタックルに入るなど吉田らしい攻めのレスリングでテクニカルフォール勝ちをおさめた。

 カナダとの決勝は、すでにチームとしての優勝が決まっている状況での試合だった。しかし「常に勝つことしか考えていない」という吉田は、こうした状況であっても「ここで負けられない」と気を引き締めた。相手はアテネ五輪と昨年の世界選手権で、いずれも決勝で対戦したトーニャ・バービーク。「差は縮まってきている」と言うものの、得意のタックルがさえ、最後はテクニカルフォール勝ち。これで国際大会の連勝記録を「96」に伸ばした。

 9月に行われる世界選手権では順調に決勝までいくと4〜5試合を戦う。つまり、吉田の連勝記録が100を超える時は、世界選手権を制した時ということになる。「いい形で迎えられるので、優勝を目指して頑張りたい」と意気込んだ。

世界の中で圧倒的な強さを見せ、この大会ではMVPにも輝いた。しかし、「相手も研究してくるので油断してはダメ」と気持ちは常に張っている。世界選手権では“100連勝”という偉業を歴史に刻むことを期待したい。

(取材・文=神谷衣香、撮影=矢吹建夫)


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