【特集】王国復活へ最高のスタート。4冠目指す日体大【2006年5月23日】






 優勝が決まった瞬間、日体大の監督、コーチ、そして80人の選手たちの歓声が一つになった。昨年、団体戦無冠という屈辱を胸に、チーム全員で王国復活を誓って練習してきた。絶対に取りたかったタイトルを手にした瞬間、安達巧監督
(右写真=試合後の胴上げ)、湯元健一主将は「ホッとした」という。

 昨年の最後の団体戦・全日本大学選手権を終えた時、日体大は新たなスタートを切った。今年は正月から厳しい合宿を組み、日常生活も引き締めてやってきた。湯元主将をはじめ幹部が徹底して選手たちに目を向けたこともあり、練習を休むような部員は一人もいなくなった。全員が意識を高く持ち、タイトル奪還に向けての「必死さはすごかった」(湯元主将)という。

 しかし、「今年こそタイトルをとらなければ」というプレッシャーも、もちろんあった。湯元主将は“日体大主将”としての重みも感じていた。「これだけ頑張ってくれたのだから、自分がみんなに心配させるような試合をしてはいけない」。前日の計量が終わってからずっと、今までにない緊張があったという。

 そんな中、日体大は硬くなることもなく、全員で盛り上がって攻めているような印象を受けた。安達監督は選手に「第1ピリオドから必死で取りにいこう。己を信じて行け」と言い続けていたという。そして「選手はそれを理解し、実行してくれた」。層の厚さと競った状態でも2分間で確実にポイントを取る強さ、そして王国の意地を見せることができた。

 湯元主将も「日体大はやっぱり強いってみんなに思ってもらえたと思う」と笑顔。しかしこれで終わりではなく、むしろ始まりだととらえている。目標は4冠(東日本学生リーグ戦、全日本学生王座決定戦、全日本大学グレコローマン選手権、全日本大学選手権)だ。「(4冠が目標なので)まだ25%」(安達監督)、「次(全日本学生王座決定戦)も勝たないと意味がない」(加藤陽輔コーチ)と気持ちは途切れていない。そして、「4冠を取れる自信はある」と断言した。

 王国の完全復活に向けて、日体大は最高のスタートを切ることができた。
(左写真=チアガールも王国復活を応援した)

(取材・文=神谷衣香、撮影=矢吹建夫)



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