【特集】日大主将の肩書きが精神力を向上…フリー84kg級・松本真也【2006年6月4日】






 東日本学生リーグ戦で決勝へ進出したものの優勝を逃した日大。その主将としてチームを引っ張ったフリースタイル84kg級の松本真也は、リーグ戦のあと、今大会の優勝をチームに宣言していたという。宣言通り優勝し、世界選手権のキップを手にした。

 「これで少しは(チームが)盛り上がったと思う」と、個人戦であってもチームを考え、主将らしさを垣間見せた松本。「主将になる前は自分さえ強くなっていればよかった。でも、今はまわりも強くならないとだめ」。この意識改革により、今では周囲への気配りも自然とできるようになった。富山英明監督は、主将になってからの精神力の向上を指摘している。“日本大学主将”という肩書きも、松本を成長させた一つの大きな原動力だろう。

 決勝は同学年のライバル、磯川孝生(拓大)との対戦。勝ったり負けたりの繰り返しで、リーグ戦では松本が敗れている。しかし、だからこそ「もう恐怖心はない」と思い切って臨むことができた。「内容を重視したかった」というように、序盤から積極的に前に出た。最後は磯川のタックル返しに松本がそのまま乗る形となり、フォールで優勝が決まるという予想外の展開ではあったが、富山監督も「攻め抜いたのがよかった」とその戦いぶりを評価した。

 磯川との対戦が注目される中、松本にはもう一つ壁があった。山本悟(岡山・鳥城高校教)の存在だ。昨年の全日本選手権の優勝の時は対戦がなかったが、一昨年の全日本選手権と昨年の全日本選抜選手権で敗れ、「苦手意識を持っていた」という。その壁を越えることができた喜びは大きいようで、「一皮むけたかな」と白い歯を見せた。

 松本にとっては選手として行く初めての世界選手権。練習パートナーなどで同行したことはあるので、どのような場であるかはよく知っている。「選手として行けるのはうれしい。しっかりいいところを出せるようにしたい」と意気込みは十分。カデット時代にはアジアを制しているので、「シニアでも勝たないといけない」と気持ちも程よく張り詰めている。松本らしい攻めのレスリングで、世界をうならせてほしい。

(取材・文=神谷衣香、撮影=矢吹建夫)



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