【特集】新旧世界チャンピオン決戦を制する…女子59kg級・正田絢子【2006年6月5日】






 新旧世界チャンピオン同士の対戦となった女子59kg級の世界選手権代表決定プレーオフは、昨年の世界チャンピオンの正田絢子(ジャパンビバレッジ)が山本聖子(同)を2−0で下し、2年連続世界一へ一歩前進した。

 第1ピリオドは、昨年の世界選手権で外国選手相手に面白いように決まった飛行機投げで貴重な2点を獲得。チームメートでもある山本には、さすがに完全な形では決まらなかったが、機先を制する役目は十分にあった。第2ピリオドは0−0のあとのコイントスで勝ってクリンチからの攻撃を制した、

 同じ勝利でも、3月のクイーンズカップでの勝利の何倍もうれしいようで、試合直後はふだん指導を受けている京都・網野高の吉岡治監督のもとへかけよって大粒の涙を流した。「うれしいのひと言です。ちびっ子の時は負け越していた相手ですし、私の2度に対して4度も世界一になった相手に勝ったのは自信になる。前へ出てパワーで圧倒するレスリングを貫き通そうという気持ちでした」。快勝に舌も滑らかで、ひとつの質問に対して答の言葉が次々と出てくる。

 しかし、優勝した瞬間の気持ちを問われると、「一緒に減量を手伝ってくれた(網野)高校の選手とか、たくさんの人のことが思い浮かんできて…」と涙ぐみ、言葉がやや滞った。それでも「そんな人たちに恩返しができたと思います」という言葉は、万感をこめて力強く口にした。

 4月のアジア選手権は63kg級で出場。「59kg級の体にして63kg級で優勝できたことは自信になりました」。先月の女子ワールドカップ(名古屋)は、メンバーに名を連ねていたにもかかわらず出場機会に恵まれなかったが、「聖子さんの試合をじっくりと研究することができました」。すべてが自分に有利なように回っていたようだ。

 北京五輪は59kg級が実施されないため、この階級での出場は世界選手権を最後にし、その後は63kg級に戻して五輪代表を目指す予定。それだけに、世界選手権では“優勝”が目標。「中国での世界選手権は、北京オリンピックの前哨戦だと思っています。今回勝ったことを自信にし、必ず二連覇を達成したい」。力強く通算V3を宣言した。

(取材・文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)


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