【特集】勝負をかけた胴タックルが決まる…グレコ55kg級・豊田雅俊【2006年6月5日】






 新旧交代か、と思われたグレコローマン55kg級は、アテネ五輪代表の豊田雅俊(警視庁)がプレーオフで平井進悟(ALSOK綜合警備保障)を下し、薄氷を踏む思いで世界選手権への道を切り開いた。

 平井は拓大時代の後輩で、お互いに手の内は知り尽くしている相手。グラウンドでの攻撃はともになかなかポイントが取れず、豊田の攻撃は立ち上がられることが多く、これが苦戦の原因。プレーオフの第3ピリオドを制した技は胴タックルで、「グラウンドではポイントが取れない。何かを変えて攻撃しなければならない、と仕掛けた技」だという。「気持ちひとつで乗り越えたという感じですね」と苦笑い。

 決勝でピリオドスコア0−2で黒星。これまで接戦はしたものの、負けたのは初めてであり、精神的な落ち込みが心配された。しかし、負けたあとは「なるようにしかならない、と開き直ってプレーオフを迎えた」と言う。「この気持ちの切り替えがよかった」とも振り返る。

 徳島・穴吹高時代は超高校級の選手として騒がれ、拓大でも早々と学生の王者に輝くなど、順風のレスリング人生を送った。その後、スランプだった時期が数年あって、03年に初めて日本代表として世界へ飛び出た。この勝利でアテネ五輪を含めて4年連続で日本代表として世界で闘うことになった。「このあたりでメダルを取り、弾みをつけて北京オリンピックを目指したい。日本代表として恥ずかしくない闘いをしたい」と、4度目の世界挑戦にかける。

(取材・文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)



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