【特集】ライバルを倒して得た最高の世界選手権キップ…フリー60kg級・高塚紀行【2006年6月5日】






 フリースタイル60kg級全日本チャンピオン、湯元健一(日体大)とのプレーオフを終えると、高塚紀行(日大)は「今までで一番うれしい」と、感無量といった表情を見せた。「世界選手権がかかっていたこともあるけれど、ずっと湯元さんに負けていたので、借りを返したかった」。昨年の全日本選抜選手権、全日本選手権では共に決勝へ進んだが、湯元に連敗。その悔しさが、高塚を奮い立たせた。

 湯元と一緒に行ったヨーロッパ遠征時も「湯元さんには負けない」という強い意志で臨み、常に湯元より上の結果を出した。そして「ダン・コロフ国際大会」(3月25〜26日、ブルガリア・プロブディフ)では銅メダルを獲得。ライバルよりいい結果を残せたことと、国際舞台で多くの試合を積んだことが自信につながった。

 その自信をそのまま持ち越し、高塚は3年生になってから無敗。先月の東日本学生リーグ戦ではチームに大きく貢献し、松本真也主将と共にチームを引っ張る意識も生まれるなど、気持ちの面でも成長した。「上級生だし、下手な試合はできない。昨年よくなかったので、今年は全部タイトルをとる」と強気の姿勢だ。

 今回、高塚はプレーオフの延長クリンチを除けば失点はわずか1点。相手に点をやらないという自分のスタイルができていた。その要因は「気持ちが途切れなかった」(高塚)こと。富山英明監督も「力を出し切った。やっぱり(今回のように)思い切りいけば結果は出る」と絶賛する戦いぶりだった。

 世界選手権の前に出場する今月中旬の世界学生選手権(モンゴル・ウランバートル)については、「世界選手権より下の大会なので、確実に優勝をねらっていく」と宣言。そして世界選手権は「出るだけでは意味がない。メダルをとらないと」と力強い口調だ。

 無敗記録は伸ばせるか。自信に自信を重ねた高塚の活躍に期待したい。

(取材・文=神谷衣香、撮影=矢吹建夫)




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