【特集】3月の松永との対戦で勝利の手ごたえ…フリー55kg級・田岡秀規【2006年6月5日】






 気合の坊主頭で今大会に挑んだフリースタイル55kg級の田岡秀規(自衛隊)が、本命と思われた世界選手権5位で全日本王者の松永共広(ALSOK綜合警備保障)を準決勝で退け、決勝では齋藤将士(警視庁)を下して初優勝。世界選手権出場をかけたプレーオフでも、勢いそのままに松永を終了間際に逆転し、初めて世界へのキップを手にした。

 ドラマティックな勝利だった。プレーオフは互いに譲らず第3ピリオドへ。チャレンジャーの田岡は残り8秒で場外へ押し出され、1ポイントのリードを許す苦しい状況に追い込まれた。勝負はあったかに思われたが、田岡はすぐさまタックルから外掛けを繰り出し、松永の足を払って3ポイントを獲得。殊勲の25歳は「最後はがむしゃらに行くしかないと思った。あきらめないでよかった」と残り3、4秒の逆転劇を興奮気味に振り返った。

 3月のブルガリア遠征で出場した「ダン・コロフ国際大会」で松永と対戦し、試合には敗れたものの「相手が嫌がる技があったので、今大会はそれを出そうと思っていた」という。研究の成果に加え、バランストレーニングで体幹を鍛えたことも本命撃破につながったようだ。

 フリーの55kg級は、アテネ五輪で田南部力(警視庁)が銅メダルを獲得し、昨年の世界選手権では松永が5位に入賞している。軽量級の代表として上位進出が期待される田岡は、「とにかく自分の力を出し切りたい」と大言を封印。「オリンピックが目標なので、ここで満足するわけにはいかない」と気持ちを引き締めていた。

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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