【特集】来年の目標は1年生インターハイ王者…男子73kg級・北村公平【2006年6月13日】






 全国中学生選手権の最優秀選手に授与される沼尻直杯は、昨年の田中幸太郎選手(53kg級優勝=京都・男山三中)と同じ京都・八幡ジュニアに所属する73kg級優勝の北村公平選手(京都・男山東中)が獲得した(右写真)。昨年の66kg級に続いて2年連続優勝。昨年は失点0ながら、半分は2分間フルに闘ったピリオドだった。ことしは2分間闘ったピリオドはなく、すべてのピリオドをフォールかテクニカルフォールでの勝利。一段と成長した強さを見せつけた。

 「自信はありました」。きっぱりと言い切ったものの、準決勝の村上貴之(長崎・島原一中)戦で喫した場外へ出されての1失点が痛恨の様子。最後は7−1からフォールを決めた試合だが、「点を取られたので内容はよくない。悔しい」と欲の深いところを見せた。

 体力的にずば抜けているのは試合を見れば誰もが感じること。背筋力などの体力数値は測ったことはないそうだが、友人らと腕相撲をやると圧倒的な強さで勝つという。中学生ばなれしている体力であることは間違いない。自らも「パワーで押し切るタイプ」と話し、体力面の有利さを今後のレスリングに生かしていくつもりだ。

 パワーに頼りすぎるレスリングでは、いつかは壁にぶつかるだろうが、基礎体力が十分にあることは大きな武器であり、強くなるために必要なこと。ここに技術や戦術を身につけていくことで、大きな飛躍へとつながっていくはずだ。

 卒業までの間には、8月にこの大会の優勝者で実施する韓国遠征があり、今年は単なる親善試合ではなく、限りなく大会に近い実戦試合が用意されている。「パワーでは負けないと思いますけど…」。昨年は事情があって参加しておらず、今回が初めて外国選手と手合わせすることになる。自分の力がどこまで通じるか試してみたい気持ちが十分だ。

 八幡ジュニアの浅井務監督は、日体大時代に90kg級で学生三冠王(全日本学生選手権グレコ、全日本大学選手権、全日本大学グレコローマン選手権)に輝き、パワーファイターとしてならした選手。「目標としています」と話す一方、「先生を超えたい」と、恩師が達成できなかったオリンピック出場を目標に置いている。

 もう1人の身近な目標は、今月、世界選手権の代表権を獲得した松本真也選手(京都・網野高〜日大)だ。松本選手はインターハイの1年生王者に輝いて3連覇を達成するなど、3年間でメジャー10大会に優勝して高校のタイトルを総なめにした選手。「スタイルが似ていると言われます。高校へ行って、まず1年生でのインターハイ王者を目指します。松本さんの後を追いたい」。2年連続中学王者を達成した選手らしく、気持ちはすでに来夏のインターハイへと向いている。強さを追求する気持ちに遠慮がない。

 八幡ジュニアのHPには、浅井務監督の指導哲学として「守っていては勝てない。『攻撃は最大の防御』という言葉がある通り、けして守りに入らず、常に前に出て攻める・追いつめる正攻法の攻撃レスリングを『浅井のレスリング哲学』として八幡の選手達に浸透させたい」という言葉が掲載されている。昨年の田中選手に続き、今年の北村選手も、その言葉を実践してのMVP獲得だ。この教えを今後も忠実に守っていくことができれば、1年生でのインターハイ王者、そしてそれ以上の栄冠が待っているだろう。

 松本真也選手の高校10冠獲得は、もう2度と実現する選手がいない偉業と思われた。しかし、強豪が相次いで生まれた八幡ジュニアの選手を見ると、空前“絶後”と表現するのは誤りであるような気がしてきた。まずこの夏、韓国で日本男子選手の強さを十分に見せつけてほしい。世界に視線を向け、日本レスリング界を支える選手に成長してほしい。

(取材・文=樋口郁夫)


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