【特集】史上初の親子2連覇は、さらなる栄光の序章…男子42kg級・森下史崇【2006年6月13日】





 昨年、親子での全国中学生選手権優勝を実現した42kg級の森下史崇選手(茨城・野々井=昨年は38kg級での優勝)が、ことしも5試合に快勝して優勝。父・敏清さんと同じ2年連続優勝を達成した。

 準決勝までは、すべてのピリオドをフォールかテクニカルフォールでの圧勝。決勝の相手の大角翔(大阪・青山台)は、昨年の西日本中学選手権の準決勝で闘った相手であり、その時はかなりの接戦をした選手。その意識があったのか、それとも「史上初の親子2年連続優勝」というプレッシャーか、かなり苦しい展開となり、がぶったまま攻撃できない展開などが続いた。

 それでも、第2ピリオド終了間際にタックルを決め
(右写真)勝負どころをしっかりとものにし、ピリオドスコア2−0で勝利。喜びの中にもホッとした表情を浮かべた森下選手に対し、この試合の時だけは大会役員(審判)の立場を離れてセコンドで応援した父・敏清さん(左写真の向こう側)は大きなガッツポーズ。興奮のあまりか、その後のジャッジの当番をついうっかり忘れてしまうほどで、息子の快挙を自分の快挙のように喜び、祝福した。

 「去年よりタックルで取れなかった。タックルで取れるようになりたい」と反省を忘れない森下選手。冷静さを取り戻した敏清さんは「パワーが足りないので、パワーをつける練習をさせたい。パワーがないから、がぶって腕を取られると、切ることができない」と厳しく注文した。しかし「準決勝までは100点満点」と評価し、ポイントをやらないことや、フォールを狙うレスリングに徹してくれた姿勢を褒めた。

 昨夏は親子で優勝者に与えられる韓国遠征に参加した。ことしは独り立ちさせるため、敏清さんは同行しないという。卒業後は敏清さんの母校、霞ヶ浦高校へ進学予定で、敏清さんの恩師でもある大沢友博監督のもとでレスリングを続ける。“親離れ”し、自らの力で道を切り開いていかねばならない。

 今でも時に霞ヶ浦高校での練習に参加し、高校生の中でもまれている。森下選手は「まだ高校生には勝てません。体力をしっかりつけてからです」と、霞ヶ浦高の厳しさは十分に認識している。親子での2連覇達成に浮かれていては、目標として口にしたインターハイ優勝やオリンピック出場は夢で終わるだろう。

 本当の勝負はこれから。壁にぶつかった時、苦しいと思った時、思い浮かべてほしいのはこの日の気持ちだ。父とともに樹立した前人未到の栄光は、どんな辛さにも耐えさせてくれるに違いない。

(取材・文=樋口郁夫)


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