【特集】高校三冠王者、森川一樹(山梨学院大)、栄光への第一歩…東日本学生春季新人戦【2006年6月19日】






 ホープの宝庫、東日本学生春季新人戦(6月15〜17日、東京・駒沢体育館)で、昨年高校三冠王者に輝いた期待の1年生がしっかり結果を残した。フリースタイル66kg級の森川一樹(山梨学院大)だ。4月のJOC杯では、決勝で米満達弘(拓大)に敗れ、悔しい思いをした(写真の左が森川、右が米満)

 「新人戦で優勝するのはあたりまえ」と周囲からのプレッシャーも大きく、自身も「絶対勝ちたい」と思って臨んだ今大会。「大学になると技術もあり、レベルが高い。簡単には勝たせてもらえなかった」とは言うものの、片足タックルからの攻撃で順調に勝ち進んだ。

 この片足タックルは、実は大学から始めたものだ。きっかけは米満。それまでは、高校時代の先輩でもある昨年の全日本大学王者・大沢茂樹(山梨学院大)を見て両足タックルをやってきたが、「なかなか大沢先輩のようにはうまくいかない」と首をかしげる部分があった。しかし、米満の片足タックルに魅了され、練習を始めた。米満とはタイプが同じなので、試してみるとうまくいったという。敵といえども素直に絶賛し、技を吸収しようとしている。

 日頃のトレーニングによって、パワー、スピード、スタミナの3点セットは兼ねそろえている。一方で「自分には技術がない」と断言する。それでも、他の選手の良い部分を取り入れていけるのは強みだ。さっそく、大学で目標とする選手も見つかった。米満はライバルであり、手本でもある。秋季の新人戦はともに74kg級での出場が予想され、「米満さんに勝ちたい」と今から闘志を燃やしている。

 森川にはもう一つ武器がある。「力だけはトップクラス。誰にも負けない自信がある」と自ら言う。何か一つ、これだけは負けないというものを持っていることは大きい。

 将来的に見つめる先は「当然、オリンピック」。昨年12月の天皇杯全日本選手権は、優勝した佐藤吏(早大)に初戦で敗れ、今月初めの明治乳業杯全日本選抜選手権では出場を逃している。しかし「今のフリー66kg級は実力差があまりないので、自分にもチャンスはある」と積極的だ。

 全日本選抜選手権では、全日本1、2位、そしてアテネ五輪5位の池松和彦(K-POWERS)までもが初戦で敗れ、混戦が続くこの階級に、また一人有望株が現れた。新人戦優勝は、もちろんスタートライン。この新人が成長を続け、フリースタイル66kg級をさらに熱くしてくれることを期待したい。

(取材・文=神谷衣香、撮影=鎌賀秀夫)


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