【特集】“網野の強豪”松本真也を超えた! 永田裕城が2年連続高校四冠王へ王手【2006年8月20日】





 昨年、2年生で高校4冠王(JOC杯カデット選手権を含めて5冠王)を達成した永田裕城(えいた・ゆうき=京都・網野、左写真=右は吉岡治監督)が、今年、1階級上の84kg級で全国高校選抜大会、インターハイに続いて全国高校生グレコローマン選手権を制覇。10月の兵庫国体で2年連続高校4冠王へ挑戦することになった。

 網野高では、4年前に松本真也(現日大=84kg級全日本王者)が3年間でメジャー8冠(全国高校選抜大会2度、インターハイ3度、国体3度)を制覇するという「これ以上の記録はない」という偉業を達成している。永田は1年生のインターハイで優勝できなかった段階で、この記録に手が届くことがなくなったわけだが、松本は全国高校生グレコローマン選手権は2度出場して2度とも3位。松本の勝てなかった大会を2年連続で制したわけで、2年連続高校4冠王となれば先輩の達成できなかった記録を樹立することになる。

 13日前に終わったインターハイで、団体・個人ともに決勝まで進んで闘い続けたのは永田ただ一人。心身の疲労は誰よりもあったはず。また、ふだんはグレコローマンの練習はしておらず、インターハイに出場できずにこの大会に絞って強化してきた選手に比べればハンディはある。

 しかし、チャンピオンを目指す人間は、負けを正当化する理由を探してはならない。闘う以上は、無失点での勝利が目標。結果は、準々決勝の佐藤光大(秋田商)戦で4ポイントを取られた以外は失点を許さない内容での優勝。「ローリングが全部かかった。相手のグラウンドもしっかり守れた」とグラウンド攻防の実力を確認することができ(右写真=相手のグラウンド攻撃を守る永田)、リフト技も2度成功。貴重な経験を積み、高校生活最後の大会へ臨めそうだ。

 今年は4月のJOC杯ジュニア選手権で大学生に苦杯を喫した。さらに120kg級で出場したインターハイ団体戦でも黒星を喫している。しかし、自分の階級で同世代の選手にはこの2年間で負け知らず。この点で満足しているかと思われたが、「日韓戦で韓国の選手に負けたことがあります。それが悔しい」と、視線は世界へ向いており、国内で勝つことだけで満足はしていない。もちろん昨年のアジア・カデット選手権(茨城・大洗町)の決勝でイラン選手に負けたことも、消えることのない悔しさだろう。

 こんな永田に対し、網野高の吉岡治監督は「松本真也を目標に頑張っている。松本が取れなかったグレコローマンのタイトルを取ってやる、という気持ちは強かったみたいですよ」と笑う。強さの秘密を問われると、「練習熱心」を挙げた。「運動能力がずば抜けているわけではない。でも、とにかくよく練習する」と言う。日体大、日大、専大といった東京の大学にまで1人で練習に行くそうで、強い選手を求めて練習する姿勢が、強さにつながっているようだ。

 本人は「84kg級としてはまだパワー不足。もっと力をつけたい」と話し、84kg級の日本の頂点にいる松本真也に「いつか勝ちたい」と気合を入れるが、吉岡監督は「ふだんの体重が80kgちょっとだし、74kg級でもいいんじゃないかな」と、2人の教え子の激突は避けたそう。その結論は、進学先の日大へ行ってから決めることになるだろう。今は国体での優勝に全力を尽くさせる腹積もりだ。

 まずは、史上初となる「2階級にわたっての2年連続高校四冠王」に全力投球。“松本超え”を果たすであろう逸材の秋が楽しみだ。

(取材・文=樋口郁夫)


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