【特集】「インカレは学生の集大成じゃない!」…佐藤吏(早大)【2006年8月26日】





 インカレ3連覇を目指す男子フリースタイル66kg級の佐藤吏(早大)――。2005年12月の天皇杯全日本選手権では、ラスト5秒で逆転し、早稲田大学の現役学生として25年ぶりの優勝を果たしたことは記憶に新しい。
しかも2003年世界選手権フリー66kg3位の池松和彦(K-POWERS)が出場した大会での優勝。池松との直接対決はなかったものの、池松を倒した小島豪臣(日体大)からフォールを奪うなど、早大出身として2人目の五輪出場が現実味を帯びてきていた。

 五輪代表選考が本格化するのは2007年から。そのために今年冬には、思い切って調子が悪かった右ひざにメスを入れた。もちろん、今シーズンを棒に振る予定はなく、5月の東日本学生リーグ戦では主将として優勝を掲げてトレーニングを積んだ。

 しかし、調整むなしくリーグ戦では苦戦。チームに勢いを与えることはできなかった。「ひざを気にしながら試合をしていた」と、6月の明治乳業杯全日本選抜選手権も初戦敗退。プレーオフでは天皇杯でフォール勝ちしている小島にストレートで敗れた
(下写真=右が佐藤)

 世界選手権に王手をかけていながらの代表漏れ。ショックも大きく、気持ちの切り替えがつかないまま世界学生選手権(モンゴル)に強行出場した。しかし、そこで3位の表彰台に上ることができた。メンタル面が下降気味の状態でつかんだ3位入賞だったので、「もし調整が万全だったら、優勝できた」と再び前を向くきっかけになった。ひざは順調に回復してくれ、夏場の合宿後には、「もうひざを気にすることはないですし、今のタックルには自信がある」と完全復調を宣言た。

 佐藤にとって、インカレ3連覇に追い風となるキーワードがひとつある。それは「草津」だ。今夏、早大は日体大と合同で夏合宿を行った。日体大は毎年草津で合宿を張ることが有名だが、3年前、佐藤がインカレを始めて制覇した年も、夏合宿を張った場所は草津だった。「高地トレーニングができて調整しやすい場所」とゲン(縁起)のいい草津で今年も最終調整ができたことで、3連覇への自信を深める。

 順調に勝ち進めば、明治乳業杯で黒星をつけられた井上真彰(山梨学院大)と準決勝で対戦する。ふつうならばリベンジに闘志を燃やすところだが、「誰に勝ちたいとかはないです」と佐藤は優勝することだけに全神経を注いでいる。さらに「インカレで学生の集大成を見せるつもりはない」とさらり言い切る佐藤が見据えているもの――、それはもちろん北京五輪だ。

 すでに大学卒業後もレスリングを続けることが決定。大学最高峰の大会でも佐藤にとっては通過点に過ぎない。今シーズン、けがで思うような成績を残せなかった佐藤吏が、万全な状態でインカレ3連覇を目指し、完全復活する。


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