【特集】世界選手権へかける(11)…男子フリースタイル120kg級・北村克哉【2006年9月15日】






 男子フリースタイル120kg級日本代表の北村克哉(専大)は、これまでに出場したシニアの国際大会といえば、今年1月の「デーブ・シュルツ国際大会」(米国)だけ。初出場の中でも、一段と経験の浅い“ニューフェイス”の日本代表選手。昨年まで4年連続全日本王者だった田中章仁(FEG)が手術後で戦列を離れている間の日本代表権奪取であり、「どこまで行けるか分かりません」と、不安の方が大きいのは仕方ないだろう。

 「デーブ・シュルツ国際大会」では、ブラジル選手に2−1で勝ったものの、2人の米国選手には、「1人の選手には何もできずに負けた。もう1人には、こう着状態が続き、攻めることができなかった」と、ともに攻める端緒すら見い出せなかった完敗。高地で息が上がってしまい、「体力不足を痛感しました」と言う。

 しかし、全日本チームでの練習相手でもある96kg級の小平清貴(警視庁)からは「パワーがある。それを生かせ」とアドバイスされたという。本人も「パワーには多少自信がある。後半にはポイントが取れないので、最初の30秒で1ポイントを取るのが目標」と、日本選手によくあるスタミナ型ではなく、先行型での闘いを目指している。

 背筋力は計測したことがないそうだが、ベンチプレス150kg、デッドリフト245kgをクリアできることを考えれば、300kg近くはいっているだろう。春の学生リーグ戦はチーム事情で96kg級への出場となったため
(右写真)、思い切った筋力トレーニングができなかったが、世界選手権を目指すことになったその後は心おきなく筋肉のアップに取り組んだ。

 105kgだった体重は110kgへ。世界には通常体重が130kgあって、そこから落としてくる選手もいるので、これでもまだ“小型”の部類になるのだろうが、とにかく世界での闘いを経験し、そこから世界で通じるために必要なことを得てくることが、今回の大会の課題となるだろう。「チャレンジャーですから、思い切っていくだけです」。怖いもの知らずの若さこそが、最大の武器になってくれそう。

 もちろん、日本代表として結果を出さなければならないことは理解している。12月のアジア大会(カタール)は、「メダル獲得の見込みがない」として重量級は派遣なしとされたことは、悔しいことだった。「出たかったです。いろんな国の選手とやってみたかったですから…」。自らの責任による決定ではないものの、勝負の世界の厳しさを痛感した。後に続く選手のためにも、「勝てる重量級を目指したい」と気合を入れる。

 プロとアマの垣根がなくなったこともあり、重量級の選手にとってはプロレスやプロ格闘技へ進むことが以前よりも盛んになっている。レスリングでは世界との差が大きいため、早々とプロの道を目指す選手もいる。北村も、プロレスやプロ格闘技を「将来の選択肢のひとつとは考えていますが…」としながらも、「オリンピックへ出たい。レスリングを続けられる環境があれば、卒業後も打ち込みたい」ときっぱり。

 その思いを実現するためにも、全力でぶつからねばならない世界選手権。昨年のこの階級は26選手が参加しており、1勝を挙げれば15位以内には食い込め、世界の19人が参加できる北京オリンピックの出場圏に食い込める。“まず1勝”を目指した積極的な闘いが期待される。


 ◎北村克哉の最近の国際大会

 
【2006年1月:デーブ・シュルツ記念国際大会(米国)】

1  回  戦  ○[2−1(0-1,4-0,2-0)] Diego da Silva Rodrigues(ブラジル)
2  回  戦  ●[0−2(0-7,0-6)] Michael Irving(米国)
敗者復活戦 ●[0−2(0-1,0-2)] Brian Keck(米国)



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