【特集】藤本浩平、米満達弘が強豪を撃破、拓大が初優勝【2006年9月16日】







 昨年12月の全日本選手権2位の藤本浩平(3年)と、JOC杯ジュニア王者であり今年6月の全日本選抜選手権2位の米満達弘。同じ階級(66kg級)に2人の全日本トップ選手がいるという、“もったいない”戦力を抱える拓大が、初めて全日本学生王座決定戦のチャンピオンに輝いた。

 藤本が準決勝で日体大主将の湯元健一(60kg級のインカレ王者)を下してチームの勝利を近づければ、米満が決勝で早大主将の佐藤吏(インカレ3連覇)を下す活躍で勝利を決定づけた。84kg級にはインカレ両スタイル王者の磯川孝生がで〜んと控えている布陣を考えると、66kg級で2−1としておけば、実質的に“あと1勝”という状況になる。相手チームの主将を下してチームスコアをリードした両者の健闘が光る。

 その“あと1勝”をマークしたのは、2試合とも74kg級の桜井浩二(4年=
左写真)だった。西口茂樹コーチが「高校時代は63kg級の選手で、決して強い選手ではなかった。でも、こつこつと練習を重ねてくれた選手です」と評価する努力家。決勝の大月葵斐戦の第1ピリオドは、0−0からのコイントスで負けながらも自分のポイントにつなげるという逆転劇を演じてくれた。目に見えないパワーが拓大を優勝に導いていた。桜井の3年半の努力と、チーム内で切磋琢磨する66kg級の2人のエネルギーが最高の形でかみあった結果なのだろう。

 西口コーチは「強い、強い、と言われながら、(5月の)リーグ戦は早稲田に2−5のボロ負け。今回、プレッシャーがあったんですよ」と振り返る。リーグ戦で黒星を喫したのは日大なのだが、「早稲田」と口にしたのは、優勝の興奮の表れか? いずれにせよ、あるチームに2−5で敗れたチームが、ここまで盛り返したのは、今夏の猛練習においてほかなるまい。

 1階級下の選手を破った藤本は、ある意味では順当な結果と言える。しかし、2年生にしてインカレ3連覇の王者を破った米満
(右写真)は、まさに“殊勲の白星”であり、今後も急成長する可能性を秘めた選手。4月のJOC杯ジュニア選手権に先立ち、フリー66kg級を「○○と××の争いだろう」と予想した筆者に対し、西口コーチは「米満を見ていて下さいよ。(○○と××は)問題じゃありませんよ」と自信たっぷりに返してきた。そして、その通りの結果になった。

 その後、全日本選抜選手権で2位へ躍進。7月下旬の全日本チームのロシア遠征へ抜てきされ、世界ジュニア選手権へも出場した。「そこでの反省点をきちんと直し、今回の試合で見せてくれた」と、1日ごとに成長の跡が見えるという。藤本との“Wレギュラー制”は来年も続くのか、とさえ思わせる成長ぶり。もちろん藤本が黙って追い越されるとは思えない。2人のし烈な闘いは、さらなるパワーとなってチーム力を押し上げてくれることだろう。

 しかし、西口コーチは「反省点は山ほどあります」とも言う。「あと2つ(全日本大学グレコローマン選手権と全日本大学選手権の大学対抗得点)あります。さっそく明日から練習します」。発展途上のチームに休息は必要ないと言わんばかりの表情で、残る団体戦の連覇を誓った。

(取材・文=樋口郁夫)


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