【特集】強烈なローリングをこらえ、収穫はあった…男子フリースタイル120kg級・北村克哉【2006年9月29日】






 昨年の3位の選手が初戦の相手だった男子フリースタイル120kg級の北村克哉(専大)は、2度場外に押し出されたりし、攻撃では1ポイントも取れずに初戦敗退(写真)。前夜は「緊張で寝られなかった」というほどのプレッシャーとの闘いを得て上がった晴れ舞台のマットは、1試合で終わってしまった。

 大会前には「勝負するのはパワー。スタミナでは分が悪い」と話していたが、実際に接してみた世界トップ選手のパワーは予想以上。「初めて組んだ時にすごいプレッシャーを感じた。日本ではだれが相手でも力負けしないが、日本では経験したことのない圧力だった」と言う。

 このため自分から攻撃するという作戦も通じず、どうしても場外際で守ることが多くなってしまった。「最初からペースをにぎられてしまい、スタミナもロスしてしまった」と反省の言葉が続く。

 しかし、2度のゴービハインド(バックに回られた状態))で仕掛けられたローリングはしっかりこらえ、グラウンドでの失点はゆるさなかった。「ローリングが強い選手と聞いていた。テクられる(テクニカルフォールされる)かと思っていたけど、耐えられた。これは少し自信になる」と話し、何の収穫もない世界大会ではなかった。

 広州入りしてからの練習では、アテネ五輪王者のアーチュー・タイマゾフ(ウズベキスタン)と練習もし、試合以外でも世界の120kg級のレベルを肌で感じることができた。そこで出たある程度の結論は、「120kg級では小さすぎる」。通常体重が110kg級では、世界の中に入った時に厳しいと痛感したそうだ。

 成長期の体だけに、すぐに96kg級で闘う決断には至っていないようだが、さらなる筋力アップに取り組んで120kg級でやるか、よけいな脂肪を落として96kg級でやるかの選択に迫られた。そのことが分かったことも、大きな収穫だろう。

 同じ大学3年生で出場した60kg級の高塚紀行選手の銅メダル獲得は、「やればできるんだ、と励みになった」と言う。「自分も続くぞ、と思って臨んだのですが…。ダメでしたね」と最後は苦笑いしたが、「この大会ではダメでも、いずれは必ずいい成績を」との決意が顔からあふれていた。

(取材・文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)


《iモード=前ページへ戻る》

《前ページへ戻る》