日本協会がFILAとブルガリア協会へバイオレンス・ファイトを抗議へ【2006年10月6日】






 日本協会は10月5日、東京・岸記念体育会館内で今泉雄策常務理事ほかが会見し、女子72kg級の浜口京子選手(ジャパンビバレッジ)が決勝戦でスタンカ・ズラテバ(ブルガリア)のバッティングを受けて鼻骨4ヶ所を骨折したことに関し、中継していた日本テレビの映像を記者団へ見せたうえで(右写真=映像を見せたうえで会見する今泉常務理事=右端=ほか日本協会役員)、このビデオを国際レスリング連盟(FILA)とブルガリア協会へ送り、このような危険な行為を抗議するとともに、今後は厳罰を課す要望を出すことを明らかにした。

 問題となったのは、女子72kg級決勝戦で、浜口選手が第1ピリオドを3−1で取ったあとの第2ピリオド、両者が組み合ったあと、ズラテバが自らの頭を浜口選手の鼻を目がけてぶつけてきたように見えるシーン。開始6秒後の出来事だった。今泉常務理事は「故意」とは断定しなかったものの、脚を狙ってのタックルに入ったとは思えず、頭をぶつけてきたように映っている。その直後には小躍りしているズラテバの姿が映っており、このビデオには映っていないが、別の角度から撮影したビデオには、セコンドの笑っている姿も映っているという。

★浜口京子選手の鼻骨骨折のシーンVTR ⇒ クリック
                   (MPEG1形式、37秒)

 
この映像は、日本テレビのご厚意により、本ホームページへの掲載を認めてもらいました。日本テレビの許可なく複製等することを固く禁止します。これに違反した場合は、日本テレビほかの制作寄与者の権利を侵害することになり、刑事・民事において罰せられます。

 この時までの浜口選手は、1回戦から3回戦を無失点での3試合連続フォール勝ち。準決勝は5月のワールドカップで負けたオヘネワ・アクフォ(カナダ)を1−0、1−0で撃破。この決勝戦の第1ピリオドも、1点を先制されながら、その15秒後に3−1と逆転するなど絶好調だった。

 バッティングのあと、10秒ほどの試合がストップしたが、弱気なところを見せずに試合再開。その約15秒後に出血がひどくなり、鼻血をしっかり拭いて
(左写真)試合再々開となった。しかし、1点を2度取られてピリオド・スコア1−1とされ、第3ピリオドも落として銀メダルに終わった。試合後、鼻血が試合に与えた影響を問われ、「まったくありません」と答えていた。
 
 今泉常務は「浜口選手は、抗議も負けた言い訳も一切しなかった。順位の入れ替えや、ズラテバの資格のはく奪を要望するものではない」と強調し、「女子レスリングの発展のためにも、今後、こうした行為に対しては断固たる処置をとってくれるように要望したい」と、今回の行動に関する日本協会の真意を説明。「本人が平気な顔をしていたし、会場では簡単に考えていた。重傷だということが分かり、本人と両親に申し訳ない気持ちでいっぱい。何らかの行動を起こさなければ申し訳ない」と話した。

 浜口選手は、日本協会の木名瀬重夫・女子専任コーチを通じ、「私はレスリングが大好きです。私は今回の試合でのケガがとても痛く、つらい思いをしましたが、将来を目指す少年少女レスラーに同じ思いをさせたくありません。今は心と体を休め、1日も早くケガを直し、北京オリンピックを目指し、大好きなレスリングに励みたい。ご心配をかけて申し訳ありませんでした」とのメッセージを送った。

 母・初枝さんは、まだ話も満足にできない京子選手に代わり、「レスリングは危険のないすばらしいスポーツ。こうした乱暴な行為が認められることがあってはなりません」と話した。

 レスリングは、ルール第49条に「頭突き」を禁止する条項があり、第55条には「すべての場合において、意識的なヘッディングや乱暴な行為を犯したレスラーは、その行為の重大性を理由に審判団の判断で失格に処せられ、同時に全競技会から失格となり、順位につく権利をはく奪される」と明記されている。

 ビデオをチェックすれば、「意識的なヘッディング」とみなされた可能性があったプレーだが、セコンドが審判に抗議することも禁止されている。今大会では、セコンドが抗議でマットステージに上がった場合はイエローカードが出されることになっていたため、審判の判断に強く抗議できなかった。また、日本の根性主義に基づく「痛くてもがまんしろ!」という姿勢があったことも認め、セコンドについていた金浜良コーチ(ジャパンビバレッジ)は、「今後は、(インジュリータイムとして)認められる時間いっぱい休むようなことも必要」と話した。

 第56条には、審判によって試合結果が著しくゆがめられた場合は、FILA理事の同意の下でビデオを検証し、当該審判員の降格、あるいは免職という規定があるが、いかなる場合であっても試合の結果変更はされないことになっており、今回の日本協会の抗議(要望提出)によって、ズラテバの反則負け等に結果が変更されることは、ルール上、ありえない。


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