【特集】3大大会制覇も喜びなし…女子48kg級・伊調千春【2006年12月13日】







 昨年の世界チャンピオンの任雪層(中国)不在の女子48kg級は、今年の世界チャンピオンの伊調千春(ALSOK綜合警備保障)が順当に勝った。しかし、準決勝で中国の黎笑媚(中国=06年アジア選手権3位)相手に第1ピリオドをクリンチ(右写真)の末に落とすという不覚。ちょっぴり冷やりとさせた優勝だった。

 黎笑媚はアジア選手権で船津友里(東洋大)が勝っている相手。日本のナンバーワンであり世界チャンピオンの伊調ならそう問題のある相手とは思えないが、勝負の世界ではそうした論法は成り立たない。中国の代表という意識が強すぎたようで、今ひとつ踏み込めなかったようだ。

 しかし、冷や汗ものの逆転勝利ながらこの“難敵”を退けたことで、決勝の金亨柱(韓国)戦はかなり楽な気持ちで望めた様子。「落ち着いてリラックスしてできました。4人の最初に勝ったのでホッとしています」と、“先鋒”の責任を果たせて満足そう。表彰式の時、隣の金亨柱の顔を見たら、「アテネの時の私と同じ顔をしていました」と報道陣を笑わせた。

 妹の馨も準決勝の中国戦で動きが硬く、自分のレスリングができていなかったので、決勝までの6時間の休み時間に、歌を歌ったりしてリラックスすることを心がけたという。

 この優勝で、今年はワールドカップの個人優勝、世界選手権優勝、アジア大会優勝と年間のビッグ3の大会を制覇し、十分に満足のいく1年だったと思われるが、「目標はあくまでも北京オリンピックです」と、この程度のことで喜んではいられない。

 そんな気持ちが、優勝したあとガッツポーズを見せるわけでもなく、喜びを表現するでもなく、応援席に冷静に一礼
(左写真)した行動につながったのだろう。「メダルを見るのは、今日、明日くらいです」。アジアのチャンピオンでは喜んでいられないという気持ちが、言葉と行動に現れていた。

 来年1月の全日本選手権では、今回以上の強敵と思える坂本真喜子(自衛隊)との闘いが待っている。


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