【特集】日本からの目に見えないパワーが後押し…男子フリースタイル55kg級・田岡秀規【2006年12月15日】







 前日、3階級すべてで国旗をメーンポール掲げたイラン選手を相手に、男子フリースタイル55kg級の田岡秀規(自衛隊)が奮戦。3位決定戦で勝ち、銅メダルを手にした。

 しかし、周囲が何と思おうとも、自分が納得しなければ本物の笑顔をつくれないのが、この男。8月のベログラゾフ国際大会(ロシア)で優勝して帰国した時も、内容が悪いからとして笑顔がなかった。今回は、辛うじて応援団に対して笑顔をつくったものの、表彰台ではほとんど笑顔がなかった。

 その理由は、2回戦での03・05年の世界王者、ディルショド・マンスロフ(ウズベキスタン)戦にあった
(右写真)。「いいように料理されてしまって、ふがいなかった。銅メダルを取っても、心の底から喜べない」。

 3月のウズベキスタン・カップでの初対戦では、飛行機投げを決めるなどあと一歩のところまで追い込んだ。満を持して臨んだ9ヶ月ぶりの再戦。だが、崩すことすらできず、ポイントを取れそうなシーンが全くなかった試合をやってしまっては、満足できるはずがなかった。

 それでも、3位決定戦での今年世界8位のタギ・ダダシとの一戦は粘りを見せてくれ、胸を張っていい試合だった。第1ピリオドは、タックルに入られて背中に回られてもあきらめずに動き回り、相手を先に場外へ出して自らのポイントにする逆転劇。

 第2ピリオドは0−0のあと、クリンチのコイントスに負けて防御になったが、これも粘って立ち上がるガッツ。その直前の体勢がテークダウンだったと判断されてしまい、結局このピリオドを落としてしまったが、こうした粘りが相手に無形のプレッシャーを与えたことは想像に難くない。

 前日のイラン3階級制覇に乗って、この日も観客席の大半がイラン国旗で占められており、この試合にも相手に大声援が送られた
(右写真)。しかし田岡は言う。「仲間の顔が浮かび、絶対に負けられないと思った。マットの上では1人だけど、多くの人から支えてもらっている。自衛隊のチームメート、家族…。みんなと一緒に闘いました」。

 アジアのほぼ反対側にある日本からも、目に見えないパワーが田岡へ送られていた。そのパワーが続くなら、必ずや、現在この階級の最強の王者マンスロフを倒すまでに力が伸びてくれるだろう。

 あらためてマンスロフが目標だと分かった今大会。打倒マンスロフの気持ちをいかに強く持つかに、田岡の今後の飛躍がかかっている。


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