【特集】ユニバーシアード出場でマンネリ打破!…フリー66kg級・池松和彦





 4月から大学院へ進学するアテネ五輪代表の池松和彦(25=日体大大学院)が、学生間に混じってのユニバーシアード予選を勝ち抜き、8月のイズミール・ユニバーシアードへ出場することになった。

 「大学院生に出場資格があるとは知らなかったんですよ」と、当初は出場することなど頭の片隅にもなかったそうだが、資格があると聞かされると、そう時間をおかずに出場を決意した。「(ユニバーシアードでレスリングが行なわれるのは)めったにないことだし、世界学生選手権には出ていないので」という理由のほか、アテネ五輪のあと、全日本選手権があって欧州遠征もあったが、気持ち的には今ひとつであり、何らかの目標がほしかったからだという。

 もちろん5月のアジア選手権(中国)も目標のひとつとして考えており、10月の世界選手権(ハンガリー)は今年最大の目標だ。だが“次はない”大会となれば、毎年恒例の大会に向かう時とは燃え方も違う。「(この勝利で)4月から気持ちを切り替えて練習に臨めそうです」と、マンネリ打破という効果が期待できそうだ。

 ユニバーシアードは8月16〜20日で、帰国して1か月後には“本チャン”の世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)へ向かうことになる。体調のことや、けがをする可能性を考えると、オリンピックにまで出場した選手が無理して出場することはないとも考えられるが、池松は「けがを心配して挑まないより、積極的に挑んだ方が、いい結果が出ると思います」ときっぱり。日体大の藤本英男部長も「けがをしてダメになる選手は、何をやってもダメなんだよ」と話し、大試合に連続して挑むことを評価した。

 池松にとっては、新ルールへの挑戦の方がやっかいかもしれない。世界中のどのレスラーも条件は同じだが、「前のルールが体に染みついているので…」と、一朝一夕に転換はできなさそう。この大会でも、今までには経験したことのないバテがあった。「1ピリオドでいくら点を取っても、第2ピリオドでスタートからやり直しとなってしまう。感覚が違うんですよ」。

 頭では分かっていても、体はそうではない。「練習をいくらやっても、本当の意味での新ルール対策はできないですよ」と口にし、試合をこなすことで2分3ピリオド制のスタミナ配分などを覚えていくしかないと考えている。その意味でも、この予選を経てユニバーシアードに出場することは、世界選手権へ向けて大きな意義が出てきそうだ。

 「オリンピックの翌年ですから、世界選手権は新しい選手が多く出てくるでしょう。多くの選手と勝ったり負けたりした中から、北京五輪で勝つ強さが身につくのだと思います。北京五輪の年にひょんと出てきて勝つことなんてありえない。今年から北京五輪での勝負が始まっているんです」。最後は熱を入れて世界選手権、そして北京五輪への意気込みを話した池松。ユニバーシアードは、その過程のひとつでしかないが、「出る以上は絶対に勝つ。その気持ちがなければ勝てません」とも。

 チームの中では、オリンピック出場を経験しているただ一人の選手となる。すべてにおいて手本を示し、結果を出さなければならない。五輪後の“休養期間”は終わった。ユニバーシアード代表決定を機に、北京五輪をしっかりと見すえた闘いが始まる。

(写真は、いずれも宮原崇との決勝戦)


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