【特集】俵返し不発! 対策は「練習のみ」…グレコ84kg級・松本慎吾




1回戦  ○[2−1(0-4,3-0,3-0)] JANABEK KENJEEV(キルギスタン)
準決勝 ○[2−1(1-2,2Caution-2,4-0)] MAGID RAMZANI SAROUKOLA(イラン)
決  勝 ●[1−2(TF0-8=1:21,2-1,2-5)] KIM JUNG SUB(韓国)

 世界選手権での優勝を目指しているグレコローマン84kg級の松本慎吾(一宮運輸)が決勝でつまずいた。銀メダル−。アジア大会王者、五輪7位の松本にとっては「失点が多すぎた。納得がいなかい」と不満の残る結果。決勝は第1ピリオドに豪快な俵返しを受けてしまい、ペースが乱れてしまったという。

 ルールが変わり、俵返しを得意とする松本にとってはもってこいのルールだと思われた。しかし、1回戦からの試合を含めても豪快な俵返しは不発で、1回戦で辛うじて低い軌道の俵返し(2点)があっただけ
(写真下)

 試合の流れの中で俵返しをかけることと、パーテールポジションの体勢から「ヨーイドン」でかけることとは、「ちょっと感じが違う」のだという。さらに、スタンドでの1分間の攻防では相手のスタミナを奪うことができない。まだ体力の残っている段階での仕掛けは、これまでのようにはいかなかったそうだ。「試合を重ねていくうちに慣れたと思ったけど…」。

 試合を観戦していたバルセロナ五輪グレコローマン48kg級代表の大橋正教・綜合警備保障監督は「松本はひざを腹の下に入れて持ち上げるタイプ。四つんばいになっている相手を攻撃するのと、腹ばいになっている相手を攻撃するのと感覚が違うのだと思う」と分析した。

 レフェリーが新ルールをしっかりと把握していないところがあり、スタートのタイミングがまちまち。まして、アジアのレフェリーはグレコローマンで脚を使っての攻撃や防御を見落とすことで“有名”。松本の試合でも、フライングやリフト時の脚をめぐる納得のいかない判定があった。

 しかし松本は「急なルール変更の戸惑いはあったけど、どんなルールでも強い選手が勝ちます。関係ありません」ときっぱり。「世界チャンピオンを目指していますから」と続け、いかなる言い訳をも口にしなかった。

 もちろん反省点も忘れない。この4月から大学院へ通い、練習時間が限られた。「練習をおろそかにしていた面があったかもしれない」。時間だけでなく、授業を受けたあとに練習ということで集中力の面で問題があり、「思ったような練習ができていなかった」と振り返った。

 今後の課題としては、やはりグラウンドでの比重が大きくするべきと考えている。そして、世界選手権へ向けての“効果的な練習”を問われるとは「練習することしかありません」−。

(取材・文=樋口郁夫)



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