【特集】やるべき課題も見つかった価値ある銅メダル…グレコ74kg級・鶴巻宰


 1回戦 ○[警告2P2:00(3-0,1-0)] CHAE KYONG JUN(北朝鮮)
 準決勝 ●[0−2(0-2,2-5)] KOBONOR DQNIQX(キルギスタン)
 3決戦 ○[フォール3P1:43(Abig-2,0-3,4-0)] MJTABA BABAJANZADH(イラン)

 2年ぶりのアジア選手権出場となったグレコローマン74kg級の鶴巻宰(国士大)が銅メダルを獲得した。イランとの3位決定戦は、第3ピリオド最後の30秒間の攻撃で1点を取らなければ負けるという瀬戸際。「(ルールは)理解していました。いくしかないと思って…」。勝負をかけたリフトは持ち上げることはできなかったが、タイミングよく背中からマットに落とし、一気にフォールを奪った(写真右)

 銅メダル獲得の殊勲に笑みはあったが、「ラッキーという感じ。まだ勝ったという気がしません」と決して満足はしておらず、この成績に満足はしていないという姿勢がありあり。20日に終わった東日本学生リーグ戦にも国士大のレギュラー選手として出場しており、肉体的にはかなりハードな1週間となったが、「かえって集中力が続いた。緊張感を持ち続けてアジア選手権に臨めた」と、マイナスばかりではなかった。

 「こうした日程の時もある。体調を崩すようでは話にならない」と体調管理もしっかりしていたようで、こうした自覚が呼び込んだ銅メダルなのだろう。

 背が高くてリーチのある体型であり、クリンチ勝負は有利といわれた。それがなくなり、聞いたときには「少しショックだった」という。グラウンドの攻防の練習はほとんどやっていなかったこともあるが、その中でも俵返しはできない技。「やるとしてもバック投げでした」という。

 しかし、試合を通じて今後やるべき課題がはっきり分かったのは大きな収穫。「グラウンドの練習です。俵返しが簡単に上がるようにならなければ。スタンドでも確実に取れる投げ技がほしい」と、突然のルール変更に対しての目指す道がはっきりと見えたようだ。

 6月22〜23日には世界選手権代表をかけて明治乳業杯全日本選抜選手権に臨む。アテネ五輪代表の永田克彦(新日本プロレス職)、03年全日本王者の菅太一(警視庁)とライバルが立ちはだかるが、新ルールを経験できことで鶴巻にわずかの分ができた格好。「今回得た課題をしっかりとこなして、体調を崩さないように臨みたい」と、世界選手権のキップ獲得へ燃えていた。

(文・取材=樋口郁夫)




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