【特集】必要な“最初から攻めるレスリング”…福田富昭会長




 男子はベストメンバーで臨んだ2005年アジア選手権。金メダルこそなかったが、フリースタイルで団体戦2位、グレコローマンで団体戦3位という近来にない好成績を挙げた。ワールドカップにベストメンバー、アジア選手権に3階級で二番手が出場した女子は、ワールドカップで圧勝、アジア選手権で金メダル3個を獲得し、団体優勝を遂げた。

 男女とも確実に底上げができてる結果が残せたと言えるだろう。日本協会の福田富昭会長、富山英明強化委員長、栄和人女子ヘッドコーチに大会を振り返ってもらった。


 福田富昭会長「男子は金メダルを取らなければならなかった。ただ、世界選手権に向けての通過点として、どの選手もいい経験をしたと思う。新ルールをしっかりと研究し、それへの対応がしっかりしていると感じた。まだ、相手の攻撃を待っている選手がいる。1分間見合って、後半の1分間で勝負をかけるようなレスリングでは勝てない。最初から攻めるレスリングがもっと欲しかった。

 女子は金メダル3個を取れてまあまあだった。このまま強化を続けて、世界選手権で最低金4個を取ってほしい。2003年世界選手権は5個取っているのだから不可能ではない。中国は体力がすばらしく伸びている。ただ、技術は落ちるが、あと何年かして技術が身についたら、もっと怖い存在になるだろう。その上をいく強化をやっていかなければならない」


 富山英明強化委員長「金メダルを取りたかったが、現状どおりの結果だと思う。しかし両スタイル全階級とも底上げがなされており、次につながる基盤は間違いなくできた。他国のコーチからも、そのようなことを言われている。多くの合宿をこなしてきて、体力も強化されてきており、それが根本にあると思う。和田貴広、嘉戸洋と両スタイルに専任コーチがいて、世界トップの技術を毎日指導していることも大きいと思う。

 世界選手権に向けて、グレコローマンはリフトの攻防の練習を積ませたい。韓国などはうまいデフェンスをやっていた。日本も防御技術をしっかりと研究したい。フリースタイルは、タックルと足を使って動くことのおさらいをやりたい。世界選手権は出場選手数も多く、何試合も勝ち抜かなければならない。そうした状況で必要なものはタックルであり、フットワークだ。

 8月には、ユニバーシアードの代表はユニバーシアードで、それ以外の選手はポーランドでの国際大会に出て、最後の実戦練習を積む予定。チームのムードはいいし、コーチ、選手が一致団結して世界選手権まで強化を続けたい」


 栄和人女子ヘッドコーチ「ワールドカップでは、いろんな国が力をつけていると予想したけど、日本チームはその上をいくだけの層の厚さは出てきたと感じた。どの国も階級によってはいい選手がいるが、全階級にわたっての力となると、日本がずば抜けていると感じた。ただ、北京五輪で全階級制覇するためには、もっと強化していかなければならない。まだ階段を上がっている最中。一歩一歩頑張りたいと思う。

 各選手の戦いを振り返ってみると、48kg級の坂本真喜子は、ワールドカップで全勝したが、アジア選手権で中国に敗れた。中国選手は体つきがよく、パワーでやられたかもしれないが、これがアジア選手権でよかった。世界選手権け向けて課題ができたことになり、それの克服に全力を尽くしてほしい。

 吉田沙保里の出場した55kg級は ワールドカップで世界の1〜3位の選手(日本、米国、フランス)が集まり、アジア選手権にアジアの1〜3位(日本、中国、韓国)が集まったという感じ。63kg級の伊調馨も、ロシア、中国、ウクライナと世界選手権でのライバルになることが予想される選手と戦えた。ともに世界選手権前の貴重な闘いを経験することができたわけで、それらの選手に負けなかったのだから、揺るがない実力が身についている。世界選手権での優勝を期待したい。

 67kg級の坂本襟は、急きょ両大会に出ることになった。ワールドカップでは正直なところ全敗もあるかな、とも思ったが、03年世界チャンピオンのクリスティ・マラノ(米国)と大接戦し、ロシア選手に勝った。アジア選手権でも銀メダルを獲得。この遠征に参加した選手の中で、一番大きな収穫を得た選手だと思う。今後の大きな飛躍に期待したい。

 51kg級の伊調千春は、ワールドカップではMVPを与えたくなるような素晴らしい戦い方をした。パワー、技術、全ての面でいいものを感じた。1階級上げても、世界トップの実力を持っている。アジア選手権に出場した坂本日登美は、大会に出場した選手のレベルが今ひとつ低かったと思う。この優勝に浮かれることなく、次のステップを目指してほしい。

 59kg級ワールドカップに出場した正田絢子は、この階級では初の国際試合。最初の米国戦で第1ピリオドを落としたりしたが、試合をやるごとに慣れていった。次の国際大会が楽しみな選手。アジア選手権に出場した中西はつみは初戦で肩を脱きゅうして敗れてしまったが、優勝を狙える実力はあると思う。ただパワー不足を感じたと思う。パワーアップが課題となると思う。

 72kg級ワールドカップに出場した浜口京子は、総合的なレスリング・スタイルが以前よりずっとうまくなっていると感じた。世界選手権ではベテランのうまさを出して優勝を狙ってほしい。村島は抽選もよかったものの、決勝にいけたことが自信になり、やる気につながると思う」




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