【特集】「俵返しに磨きをかけて頑張りたい」…グレコ84kg級・松本慎吾



 決勝の第1ピリオドで5点となる豪快な俵返しが飛び出た。第2ピリオドは脚を使って防御されたりして、最後は3点の俵返しに終わったが、「5点を狙っていました」ときっぱり。グレコローマン84kg級の松本慎吾が日本のエースにふさわしい豪快な攻撃で小向忍(自衛隊)を破り、6年連続6度目の優勝に加えて明治乳業杯を受賞した。

 しかし、松本は「世界選手権への通過点でしかありません」と、こともなげに言った。「目標は世界選手権の1、2、3番に入ることですから」。アテネ五輪後から口にしていた“世界チャンピオン”という目標を“3位以内”と下方修正したのは、アジア選手権で金メダルを逃したことでの謙虚さなのかもしれないが、とにかく国内で勝つことで喜んでいられないという気持ちを表した。

 ルールが変わって「自分の得意なルールになった」と言う。この有利さを存分に生かして世界で戦うことが今後の練習の方向性で、「俵返しに磨きをかけて頑張りたい」と言う。スタンドでの1分間ではお互いにポイントを取ることは難しいので、その後のグラウンドの攻防でポイントを取る練習を積んでいきたいという。

 外国では、国内のように簡単にリフトが上がらないことは十分に知っている。逆にすごい力で持ち上げられることも。国内で上がり、上げられなかったからといって安心はできない。「そのあたりを重点的にやってききたい」。気持ちはいつも世界へ向いている。アジア選手権で金メダルを逃した悔しさをばねにした今後の飛躍が期待される。

(取材・文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)


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