【特集】「グラウンド中心の練習のかいがあった」…グレコ74kg級・岩崎裕樹



 激戦のグレコローマン74`級を制したのは全日本選手権3位の岩崎裕樹(銀水荘)。決勝で菅太一(警視庁)から劇的な勝利を挙げると、プレーオフでは全日本選手権優勝の鶴巻宰(国士大)を下し、逆転で世界選手権代表の座を手に入れた。

 代表争いで最初に消えたのはアテネ五輪代表の永田克彦(新日本プロレス職)。準決勝で菅に敗れてハンガリー(世界選手権)行きがなくなった。もう一つの準決勝は、岩崎が鶴巻に勝利し、決勝は菅と岩崎の対決となった。

 第1ピリオドは、岩崎がグラウンドでローリングを決めて1ポイント先制したが、菅に攻撃権が移ると、岩崎を投げて2ポイント。さらにローリングで2ポイントを加え菅が先制ピリオドを取った。後のなくなった岩崎はここから踏ん張った。第2ピリオド、技を決められなかったものの、菅の猛攻をしのぎ、1−1ながらラストポイントで取って、ピリオドスコア1−1へ。

 迎えた第3ピリオド。岩崎は菅の投げを返して3ポイントを奪取。最後はここでポイントを挙げなければ「警告負け」になるというグラウンドの攻防を迎えながら、執念のローリングが成功。これまで一度も勝てなかった菅を逆転で下しての優勝だった。

 プレーオフは決勝と逆の展開になった。岩崎が俵返しをさく裂させて第1ピリオドを取るも、第2ピリオドをラストポイントによって失った。流れが鶴巻に傾いたかに見えた第3ピリオド、再び俵返しで3ポイントを奪取すると、鶴巻の反撃を2ポイントに抑えて逃げ切った。

 香川・多度津工高時代の1998年に全国高校グレコローマン選手権や国体に勝ち、日体大時代の2001年に学生王者、翌02年に学生2大タイトルを制するという輝かしい実績を持っている選手だが、03年の国体で2位に終わり、全日本王者や日本代表になることがなかった。練習環境などを考えると、この段階で終わりとも思えた選手だが、世界選手権出場など上を目指す気持ちがしっかりと持ち続けていた。

 激戦を制した岩崎は「菅さんとの試合が一番厳しかったけど、グラウンド中心に練習してきたかいがあった。初めての決勝で優勝して、世界へのキップまで取れて本当にうれしいです」と声を弾ませていた。

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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