【特集】「妹と2人で世界チャンピオンへ」…女子51kg級・坂本日登美



 世界選手権代表決定プレーオフ女子51kg級は、まさに手に汗握る戦い、一瞬たりとも目が離せない好一番となった末に、坂本日登美(自衛隊)の手が上がった。

 第 1ピリオド、両者一歩も譲らず組み合った状態での攻防が続いたが、わずかなすきを突いて伊調の態勢を崩し、バックに回った坂本が、片足を奪いそのままテイクダウンして1 ポイント奪い、1−0で勝って先制。第 2ピリオドもお互いタックルに全く入れず、マット際でのしのぎ合いが30秒以上も続いたが、堪えきれず日登美の足が一歩出たところで終了。伊調がピリオドを奪った。

 同点で迎えた第3 ピリオドは両者ポイントなくコイントスへ。この時点で「予定通り」と思ったという坂本が、本人いわく「運も味方してくれて」という優先権を獲得。抱えた片足をそのまま担ぎ上げ、伊調を場外に押し出し試合を制した。

 勝った瞬間、雄叫びを上げ、大粒の涙を流し、天を仰いだ坂本。「千春はやっぱり強かったですが、今日は前回と違い組み負けませんでした。試合後半、千春がハァハァしているのがわかったので、勝てると思いました。試合展開は考えていた通りです。クリンチの練習をずっとやってきたので、それが今日の勝因です。世界選手権で2度勝ったときよりも、今日勝ったことがうれしいです。妹の真喜子といっしょにハンガリーの世界選手権に行けるので、二人とも金メダルが獲れるよう、また一からがんばします」

 一方、伊調はがっくりうなだれ、セコンドについた妹・馨に抱き抱えられるようにマットを後にした。「クイーンズカップで勝ってやっと追いつくことができましたが、やっぱり日登美は自分の前を行く選手。目標にして、全日本選手権ではまた追いついて勝てるようにがんばります。今日負けて、『目を覚ませ! 』と言われたような気がしました。悔しいですけど、馨やチームメイトが世界選手権で優勝できるようサポートしながら、ゼロからやり直します。この負けを必ず北京に繋げます」−。

(取材・文=宮崎俊哉、撮影=矢吹建夫)




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