【特集】激戦を乗り越えて2年生王者へ。支えは2人の先輩…74kg級・永田裕城(網野)





 7月28日のアジア・カデット選手権(フリースタイル=茨城県大洗町)に出場して銀メダルを獲得した永田裕城(えいた・ゆうき=京都・網野2年)が、5日後からスタートしたインターハイに出場。団体戦でベスト8に入賞したあと(自身は3戦全勝)、疲れも見せずに個人戦で奮戦。5試合に快勝して全国高校選抜大会に続いての優勝を達成した。

 団体戦の3試合を含めた計8試合で、失点は個人準々決勝の武富隆(佐賀・鹿島実)戦の1点のみ。この試合は、この1点で怒りの導火線が点火したか、フォールで完勝。同校の吉岡治監督をして「100点満点をやりたい」と言わしめた完ぺきな優勝だった。
(写真左は準決勝)

 だが、永田は「あの1失点があるから満点じゃありません。余分な1点でした」と欲の深いところを見せる。足がついていかずに、訳の分からないうちにバックを取られてしまったのだという。アジア・カデット選手権の激戦の疲れが残っていたであろうから、これも無理あるまい。

 また、選抜大会の決勝で戦いこの大会でもマークしていた山名隆貴(奈良・添上)が2回戦で敗れ、気のゆるみも出そうになったという。ここで吉岡監督から「油断するな!」とカツを入れられ、最後の力を振り絞って優勝へとたどりついた。

 「前へ出て攻めること」と自己分析する自らの持ち味以上に、強じんな体力と精神力がなければ、アジア、そしてインターハイ団体戦・個人戦を戦い抜き、好成績をおさめることはできないだろう。日々の厳しい練習の基盤があるからこそだが、それを支えてくれているのが網野高校の2人の先輩、アテネ五輪銅メダリストの井上謙二(1994年インターハイ優勝=現自衛隊)と高校八冠王を達成した松本真也(00〜02年インターハイ優勝=現日大)の存在だ。

 井上からは、オリンピックで銅メダルを取ったこともさることながら、ひざをけがして手術しながら、そこからはい上がってオリンピックでメダルを取ったガッツを学ばせてもらった。松本は高校のすべてのタイトルを独占し、最高の選手として憧れの気持ちで見つめている先輩だ。「2人の先輩のようになりたい」。その気持ちが厳しい練習に耐えさせ、この日の栄光へとつながった。
(写真右は決勝)

 昨年は無冠に終わっているので、松本の達成した高校八冠王者はもう達成できない記録だが、これから出場する大会はすべて勝つつもり。次の目標を問われ、「国体で優勝すること」と言ったあと、「全国高校グレコ大会にも出るから、ここでも優勝したい」とつけ加えた。“本職”ではないグレコローマンであっても、出る以上は優勝が目標。激戦が続く夏となるが、井上謙二と松本真也の背中を見つめる17歳の気持ちに、疲れが入るすき間はない。

(取材・文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)


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