【特集】世界選手権へかける(2)…男子フリー96kg級・小平清貴





 世界のレスリング界に輝かしい栄光を築いた日本レスリング界。その大半は軽中量級の選手によるものであるが、重量級でも世界に通じた選手はいた。84年ロサンゼルス・88年ソウル両五輪で銀メダルを取った太田章(フリー90kg級)、95年世界5位・01年東アジア大会優勝の川合達夫(フリー90・85kg級)などで、彼らに続くべく「重量級にメダルを取ってきたい。重量級にもっと脚光を浴びさせたい」と意気込んでいるのが男子フリースタイル96kg級の小平清貴(警視庁)だ。

 2001年に世界選手権へ初出場した時は、まだ“若手”のグループだった。3度目の出場となる今回は、フリースタイル・チームの最年長。チームを引っ張る自覚も十分で、3月の欧州遠征で2大会連続1回戦敗退となってしまった時には、「情けない。ここに残ってもっと練習を積みたい」と頭をかかえ、悔しさを表わした。

 5月のアジア選手権(中国)では中国、キルギスタンに勝って5位に入り、最低限度のメンツは保った。しかし満足しているわけではない。「チームを元気づけるためにも、メダル争いに加わらなければならない」という気持ちで世界選手権を見つめている。

 夏は首の故障などもあってポーランド遠征は参加せず、治療しながら日大と山梨学院大の練習に加わって調整した。終わってみると、世界選手権前の最後の実戦練習の機会を逃してしまったことに「これでよかったのか」という気持ちは残った。しかし焦りは禁物。希望を通してもらったことに感謝し、「けがもかなり回復し、しっかり調整できた」と前向きに考えている。

 今年に入ってからのルール改正で、「パッシブ → パーテールポジション」が廃止された。試合を重ねてみると「自分に有利になった」と感じている。これまでは外国選手の腕力にまかせたローリングをこらえ切れずに回されてポイントを取られ、試合の主導権を取られることが多かった。重量級の外国選手とのパワーの差は、軽中量級のそれより大きい。いかなる技術をもってしても防げなかったという。

 新ルールによってその負けパターンがなくなった。スタンドでは大きな不利はない。スタミナ面では外国選手より上と感じており、ピリオドごとにポイントがリセットされる新ルールは、勝機をさらに広げてくれたと言えるだろう。「日本選手のためのルール変更だと思います」。追い風を感じて臨む世界選手権だ。

「あと1勝」の壁が破れずにアテネ五輪出場を逃してから1年7か月。日本の重量級復権をかけて北京五輪への最初の関門に挑む。


 ◎男子フリースタイル96kg級展望

※出場選手が判明した場合は差し替えます。

 
《ロシア》アテネ五輪王者のカジムラド・ガチャロフ(写真左)は今年初めから活動を再開し、欧州選手権3位へ。03・04年の欧州チャンピオンであり、地力は十分。欧州選手権でエルダリ・クルタニーゼ(グルジア)につまずいたとはいえ、世界選手権の優勝候補だろう。

 
《グルジア》アテネ五輪はイラン選手に惜敗して上位入賞を逃したが、02・03年世界王者のエルダリ・クルタニーゼ(写真右)が4月の欧州選手権でも優勝。日本のプロ格闘技団体からのオファーもうわさされた選手だが、レスリングを続けるもようで、優勝候補の最右翼といえるだろう。

 
《米国》アテネ五輪4位のダニエル・コーミエーが代表。1月のロシア最高レベルの国際大会のヤリギン国際大会で優勝し、3月のワールドカップ2位など精力的に活動している。

 
《その他(欧州)》3月のワールドカップ1位のバシリ・テスメネチキ(ウクライナ)は優勝を狙える実力はある。中央アフリカから国籍を変えたビンセント・アカアケシー(フランス)は欧州選手権と地中海大会でともに2位と力をつけている。

 
《その他(パンアメリカン)》マイケル・バティスタ(キューバ)がパンアメリカン王者の肩書きを引っさげて出場しそう。

 
《その他(アジア)》昨年のアジア王者でアテネ五輪2位のマゴメド・イブラギモフ(ウズベキスタン)が出てくれば上位に食い込みそう。イランはアテネ五輪3位のアリレザ・ヘイダリか、ことしのアジア王者のセフィ・ハミフか。アジア3位のク・タエヒュン(韓国)はユニバーシアードでも3位に食い込んだ。


 ◎小平清貴の最近の主な国際大会成績

 【2004年五輪第2次予選第1ステージ】=6位(30選手出場)

予選1回戦 ○[Tフォール、5:16=14-4] Hong Seong-Ju (韓国)
予選2回戦  BYE
予選3回戦 ○[8−2] Boltic Sinive (ナイジェリア)
準々決勝  ●[1−9] Rustam Aghayev(アゼルバイジャン)
順位決定予備戦 ○[不戦勝] Taymuraz Tigiev(ロシア)
5・6位決定戦   ●[1−3] Rolf Scherrer(スイス)

 【2004年五輪第2次予選第2ステージ】=
8位(26選手出場)

予選1回戦 ○[9−1] Hong Seong-Jun(韓国)
予選2回戦  BYE
予選3回戦 ○[3−2] Kazbek Missikov(フランス)
準々決勝  ●[0−8] Aleksei Krupniakov (キルギスタン)

 【2005年ヤシャドク国際大会】=(19選手出場)

1回戦 ●[0−2(0-1,0-3)] Dimitar Kumthev(ブルガリア)

 【2005年ダン・コロフ国際大会】=(11選手出場)

1回戦 ●[0−2(0-1,1-3)] Robatmoradi Alireza(イラン)

 【2005年アジア選手権】=
5位(10選手出場)

予備戦 ○[フォール3P0:58(0-4,2-1,5-0)] Han Ting Hai(中国)
1回戦  ●[0−2(0-1,0-3)] N. Kataev(カザフスタン)
敗復戦 ○[2−1(1-0=2:06,0-4,3-2)] K. Nikolai(キルギスタン)
3決戦  ●[フォール1P0:22(0-5)] Sainbayar Bold(モンゴル)





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