【特集】世界選手権へかける(11)…男子グレコ96kg級・加藤賢三





 「パワーの差を感じました」。森角裕介(長野・蓼科高教)に奪われていた日本代表の座を奪還し、8月の全日本チームのポーランド遠征に加わった男子グレコローマン96kg級の加藤賢三(自衛隊)は、素直に世界との差を認めた。体重が約100kgの自分を軽々と持ち上げる−。それが欧米選手のパワーであり、実力だ。

 だが世界選手権へ出場するのは、これが初めてではない。研究し、工夫し、コーチからのアドバイスを得て対策を研究中。世界選手権では、そう簡単に上げられない何かをつかんだ様子だ。飛躍の課題は「グラウンドの防御につきます」。新ルール下で初めて外国選手と手合わせしての実感だった。

 初出場となった03年の世界選手権で、この年の銀メダリストで翌年のアテネ五輪を抜群の強さで制したイブラヒム・カラム・ガベール(エジプト)から5点を取る健闘。前年3位に入ったアリ・モロフ(ブルガリア)とは0−3の判定負け。世界と大きな差のあるグレコローマンの重量級としては大健闘であり、「怖さは感じませんでした」ときっぱり。試合度胸のよさはコーチ陣の間でも定評がある。

 度胸のよさといえば、加藤と同じ大東大の出身で、グレコローマンの130kg級で2度のオリンピック(92年バルセロナ大会、96年アトランタ大会)に出場した鈴木賢一選手のそれも定評あった。不利と思われる試合であっても、投げ技一発でフォールまでもっていく試合が何度かあり、アトランタ五輪代表権を獲得したのも、イラン選手相手に絶対不利な状況からの逆転フォール勝ちだった。

 それらの“武勇伝”は加藤も知っているし、最近食事を誘ってもらい、「重量級は投げ技があるし、最後まで分からない」など、いろんなアドバイスをもらったという。数少ない大東大出身の日本代表選手として、その“伝統”は受け継ぎたいところ。大東大魂がブダペストで爆発するか――。


 ◎男子グレコ96kg級展望

※出場選手が判明した場合は差し替えます。

 アテネ五輪までの世界トップ選手のかなりの選手が、五輪後、活動をしていないもよう。新旧交代の激しい階級のひとつで、世界選手権の優勝を争うような、そう多くは選手が読み切れない。

 
《エジプト》アテネ五輪を圧勝したイブラヒム・カラム・ガベール(写真左)が、5月のアフリカ選手権、6月の地中海選手権でも優勝した。相変わらずの強さを見せるか。

 
《トルコ》84kg級などで五輪2度(96年アトランタ・00年シドニー)優勝しているハムザ・イェルリカヤが、4月の欧州選手権で優勝。1階級アップして闘うようで、6月のドイツ・グランプリでも優勝した。世界選手権でも優勝戦線に加わる可能性は十分。

 
《カザフスタン》マルグラン・アセムベコフが5月のアジア選手権と8月のユニバーシアードで優勝。かなり力をつけている。

 
《その他》4月の欧州選手権では、2位がジミー・リンドバーグ(スウェーデン)、3位がディミトリ・ティムチェンコ(ウクライナ)とミンダウガス・エゼルスキス。ロシアは誰が出てくるか全く読めない。


 ◎加藤賢三の最近の主な国際大会成績

 【2003年世界選手権】=
30位(43選手出場)

予選1回戦 ●[0−3] Ali Mollov(ブルガリア)
予選2回戦   BYE
予選3回戦 ●[Tフォール、5:42=5-17] Karam Gaber(エジプト)

 【2004年アテネ五輪第2次予選第1ステージ】(33選手出場)

予選1回戦  BYE
予選2回戦 ●[4−7] Vinko Kadecka(クロアチア)
予選3回戦 ●[Tフォール、2:21=0-11] Masoud Hashemzadeh(イラン)

 【2004年アテネ五輪第2次予選第1ステージ】(22選手出場)

予選1回戦  BYE
予選2回戦 ○[フォール、16-3] Bakhramov Shodi(タジギスタン)
予選3回戦 ●[Tフォール、0-11] Svec Marek(チェコ)

 【2005年ピトライスニスキ国際大会】(24選手出場)

予備戦 ●[0−2(3-5、TF0-6=1:59)] Asset Mambetov(カザフスタン)




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