【特集】世界選手権へかける(17)…男子グレコ55kg級・豊田雅俊
昨年暮れの全日本選手権欠場による“全日本チーム落ち”から、ことし6月に復帰し、アテネ五輪をはさんで2大会連続の世界選手権出場となる男子グレコローマン55kg級の豊田雅俊(警視庁)は、冬の全日本遠征などに参加しなかったので、ちょうど1年間、国際大会の出場がなかった。
8月のポーランド遠征で、ちょうど1年ぶりに外国選手と手合わせ。ピトライスニスキ国際大会は初戦敗退だったものの、欧州選手との練習を通じ、「外国選手とやる感覚が戻ってきました」と言う。
試合は残念な結果となったが、新ルールでの国際大会を1試合でも経験できたことは大きかった。グラウンドの攻防におけるレフェリーのアクションや、どこまでがフライングととられるかなどを体験し、他の選手の試合を見る経験ができたからだ。「遠征に行った価値はありました」と振り返る。
その大会には、アテネ五輪の初戦で惜敗した相手で、金メダルに輝いたイストバン・マヨロス(ハンガリー)が出場しており、世界選手権にも出場してくることが分かった。マヨロスは決勝で敗れて2位だったものの、やはり豊田が目標とする選手。「決勝でやってみたい」。勝たなければならない選手は多いが、しっかりとした目標ができた。
アテネ五輪の時の力を100とすると、9月初めの段階で90くらいまでは戻っている感覚がある。リフトを得意とする自分の有利なルールになったことを考えると、「もっといい感じにきているかも」と言う。もしかしたら100を越えているかもしれない。国際大会の1年間のブランクは、さほど心配することではなさそうだ。
豊田の試合がある9月30日は、浜口京子(ジャパンビバレッジ)の出場する女子72kg級と同じ日に行なわれる。「応援も多いでしょうし、心強いですよ。でも、ボクの試合になったら、応援がだれもいなくなってしまわないかな、と心配もしているんです」と笑う。
マスコミの扱いも違ってくるだろう。「浜口さんはオリンピック・チャンピオンと言ってもいい選手。(自分の)扱いが小さくなってしまうのは仕方ない。上回ってやる、なんて気持ちは全くないです」とは言うものの、豊田も徳島・穴吹高時代に“超高校級”と騒がれた選手。16歳にして豪快な俵返しを連発できた能力は、日本レスリング界で屈指のものだ。
日本の男子に久しく待たれている世界チャンピオンの称号を手にいれれば、その扱いは浜口に優るとも劣らないもにになるはず。五輪王者と互角近くに闘え、五輪銀メダリスト(ガインダー・マメダエフ)をも破っている(04年3月)実力は、日本レスリング界の20年以上にわたる悲願を達成してくれる可能性は十分。ブダペストで、豪快な俵返しが続けざまにさく裂することが期待される。
◎男子グレコローマン55kg級展望
※出場選手が判明した場合は差し替えます。
《ハンガリー》アテネ五輪金メダルのイストバン・マヨロス(写真左)は、8月のピトラスニスキ国際大会に出場して2位。五輪王者とはいえ、それまでは、00年欧州王者があるくらいで、ずば抜けた成績を残していたわけではない。地元の世界選手権でどこまでやるか。
《ロシア》アテネ五輪2位のガインダー・マメダリエフは、7月のポッディブニ国際大会に出場して優勝。2月のワールドカップと4月の欧州選手権にはビクトル・コラブレフが出て、5位と優勝。どちらが出てくるか。
《イラン》01年の54kg級世界王者でアテネ五輪9位のハッサン・ラングラスが、2月のワールドカップで優勝、8月のユニバーシアードで2位と好調。
《北朝鮮》04年アジア5位のチャ・クワンス(写真右)が、5月のアジア選手権で優勝と力を伸ばした。8月のユニバーシアードはリ・キョンイルが勝っている。どちらが出てきても、軽量級王国の復活なるか注目される。
《キューバ》99年の54kg級世界王者で、シドニー五輪2位、アテネ五輪5位のラザロ・リバス・スカルが、2月のワールドカップ2位、グランマ国際大会2位のあと、4月のパンアメリカン選手権優勝。何とか力をキープしている。
《その他》欧州選手権3位に、イボ・アンゲロフ(ブルガリア)と昨年の欧州王者のバイラム・オエズデミール(トルコ)が入っている。アジア2位にはイム・ダエヲン(韓国)で、3月のハンガリー・グランプリなどで優勝している。
◎豊田雅俊の最近の主な国際大会成績
【2003年コンコードカップ】=優勝
1回戦 ○[TF0:58=10-0] Neal Rodak(米国)
2回戦 ○[6−0] Lindsay Durlacher(米国)
3回戦 ○[3−2] Brandon Paulson(米国)
4回戦 ○[4−0] Neal Rodak(米国)
5回戦 ○[不戦勝] −−−
【2003年デーブ・シュルツ国際大会】=5位
予選1回戦 ●[F5:25] Lindsey Durlacher(米国)
予選2回戦 ○[6−1] Anthony Gibbons(米国)
予選3回戦 ○[3−0] Enrique Montiel(米国)
【2003年ピトライスニスキ国際大会】=優勝(22選手出場)
予選1回戦 ○[9−4] Piotr Jablonsiki(ポーランド)
予選2回戦 ○[TF10-0] Tenyo Tenev(ブルガリア)
予選3回戦 BYE
準々決勝 ○[4−3] Ir Tchotchua(グルジア)
準 決 勝 ○[3−1] Boris Radkevich(ベラルーシ)
決 勝 ○[F] Ercan Yildiz(トルコ)
【世界選手権】=20位(35選手出場)
予選1回戦 BYE
予選2回戦 ○[5−3] Tero Katajisto (フィンランド)
予選3回戦 ●[0−4] Im Dae-Wong (韓国)
【2004年五輪第2次予選第1ステージ】=9位(29選手出場)
予選1回戦 ○[TF0:58=10-0] Elgin Elwais(パラオ)
予選2回戦 ○[TF1:47=10-0] Jansel Martinez(ドミニカ)
予選3回戦 BYE
決勝T1回戦 ●[0−6] Asset Imanbayev(カザフスタン)
【2004年五輪第2次予選第2ステージ】=優勝(19選手出場)
予選1回戦 BYE
予選2回戦 ○[7−3] Venelin Venkov(ブルガリア)
予選3回戦 ○[4-2=延長] Holmatov Kamol(ウズベキスタン)
準々決勝 ○[3-2=延長] Oleg Kutscherenko(ドイツ)
準 決 勝 ○[途中棄権7-0] Mukesh Khatri(インド)
決 勝 ○[5−3] Gueider mamedaliev(ロシア)
【2004年ドイツグランプリ】
予選1回戦 ●[5-5=延長] R. Bikkinin(ロシア)
予選2回戦 BYE
予選3回戦 ○[5−3] I. Kurilov(ウクライナ)
【2004年アテネ五輪】=10位(22選手出場)
予選1回戦 ●[3-5=7:26] Istvan Majoros(ハンガリー)
予選2回戦 ○[Tフォール、4:19=11-0] Jansel Ramirez(ドミニカ)
予選3回戦 BYE
【2004年ピトライスニスキ国際大会】(24選手出場)
予備戦 ●[0−2(1-@Last,0-5)] Reihanpour Soryan(イラン)