【特集】大橋正教の目「評価したい山本悟の攻撃精神」…世界選手権第2日





 世界選手権の2日目は日本選手が全員初戦で敗退。ただ1人敗者復活戦へまわった96kg級の小平清貴選手も負けてしまうという厳しい結果となりました。やはり世界選手権で勝つことは厳しいです。3選手とも過去の実績のある選手だったことは確かですが、組み合わせの運・不運を言い訳にしない本当の地力をつけなければならないことを痛感させられた結果でした。

 74kg級の小幡邦彦選手は、アテネ五輪5位のウイリアムズ(米国)相手
(写真右)に開始直後に片足タックルを受けて1点を失いました。スピードあるタックルだったので、失点してしまったのは仕方なく、これを1点で押さえたことは上出来かもしれません。

 しかし、追う立場となった時、腕を差していくだけの攻撃だったことは改善の余地があります。以前のルールなら、しっかり差して圧力をかけ、パッシブを相手に与えてパーテールポジションから攻めるという戦術が使えました。

 しかし、今はその有利な体勢を維持しているだけではポイントになりません。ポイントを取るために差すのです。脚をかけるとか、次のアクションがなければ意味がありません。ウイリアムズ相手に、そうそうタックルを決めることはできないと判断して、腕を差して有利な体勢をつくったのでしょうが、差してからの攻撃がなければ、今のルール下では何の意味もないのです。研究の余地があります。

 84kg級の山本悟選手は、アジア王者のガンバリピサール(イラン)相手に第1ピリオド、相手の攻撃をしのぎ、コイントスにもっていこうと思えばもっていける状況となりました。結局、そこからも攻めて続け、カウンターでポイントを取られてしまいました。

 本人は何としても自分の力でポイントを取りたかったのだと思います。負けはしましたが、その気持ちはとても大事なこと。その積極的な気持ちを高く評価したいと思います。必ずや次回の闘いにつながると思います。

 96kg級の小平清貴選手は、五輪王者に負けたあと、敗者復活戦のキシュ(ハンガリー)戦で、ひっかけながら片足タックルで場外へ出すという今のルールに合った攻撃を見せてくれました。こうした技を見せてくれるのですから、この試合は勝ってほしかったと思います。第2ピリオドもポイントを取っているのですから、スタミナ面も大丈夫なはずで、それはゆえに負けてしまったことは残念でありません。

 今まではパッシブ→パーテールポジションというパターンがあったので、外国選手相手には体力面での不利があったと思います。しかしスタンド中心の今は接戦できます。失点を最大限に抑えること、戦術を考えることで、勝ち抜いていく力は身についていくと思います。

 大橋正教 1964年12月7日、岐阜県生まれ。岐阜一高から山梨学院大へ。大学時代、のちにソウル五輪に輝く小林孝至選手に土をつけた唯一の選手。89年のアジア選手権グレコローマン48kg級2位のあと、92年アジア選手権で優勝。同年のバルセロナ五輪代表へ。現在はALSOK綜合警備保障監督。



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