【特集】世界で通じる“本当の必殺技”を…男子グレコ60kg級・笹本睦






 初戦でロシアの強豪シェフツォフを撃破。次の試合で、選手は代わったもののアテネ五輪を制した韓国の代表選手を破った男子グレコローマン60kg級の笹本睦(ALSOK綜合警備保障)が、準々決勝でディアコヌ(ルーマニア)に屈した。

 アテネ五輪は7位の選手。5位の笹本よりは順位だけからしたら下の選手だが、ことしの欧州選手権2位で、その大会でシェフツォフを破っている選手。笹本とは互角の実力と思われた。

 しかし、第1ピリオドのグラウンド戦で最初に2点を失い、ペースをつかむことなくマットを降りた。
以前のハンガリーへの遠征で手合わせしたことがあり、「俵返しの強い選手」という知識はあった。午前の部の試合が終わったあと、1回戦で持ち上げられたしまった反省を踏まえ、休けい時間の間に「俵返しの防御方法を見直したい。相手に脚を深くいれさせないとか」と話していたが、その対策の上をいく強さだった。「予想外の形でこられた」という。

 結局、ロシア戦で1回、ルーマニア戦で2回持ち上げられ、まだまだ防御力が足りないことが分かった。具体的に何がどうなのか、ということは、今の段階では「よく分からない」。日本に帰り、試合のビデオを見て研究することになるだろう。「日本と世界とでは、(俵返しのスタートのタイミングなどが)違う。やはり世界で経験を積まなければ」とも言う。

 一方、自らの俵返しも、ロシア戦での1発のみで最後の試合では不発。「俵返しにいくか、ローリングかにいくか、ちょっと中途半端だった」と振り返る。「やはり、これ、という必殺技がないと…。ナザリアン(ブルガリア=五輪V2で、この大会3度目の優勝)は自信を持って俵返しにいっている。ルーマニア選手も。自分は自信をもってまでは、やっていない」。俵返しを国内だけではなく、世界ででも通用する本当の意味での必殺技にするのが今後の課題となりそうだ。

 「どこも技術は同じくらい。ずば抜けた選手はいない。問題は気持ち」。まだ具体的に何をどうしたらいいのかの答は見つかっていないが、8月にナザリアンが優勝したことで闘志は燃え上がるはず。00年からことしまでの6度の世界大会(五輪2度を含む)で、10以内が4度とコンスタントに上位を占めており、基盤は十分にできている。あと一歩の奮戦が望まれる。

(取材・文=樋口郁夫)




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