【特集】浜口京子が10年連続10度目の優勝に挑戦…全日本選手権展望





 2005年天皇杯全日本選手権は12月21〜23日、東京・代々木第二体育館で行なわれる。ことしは女子72kg級の浜口京子選手(ジャパンビバレッジ)が、女子では初、男女を通じて史上2番目の10年連続10度目の優勝を目指す。女子55kg級の吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)は、柔道の谷(旧姓田村)亮子選手の持つ「84連勝」の記録超えがかかる。

 男子では、フリースタイル60kg級で学生選手によるし烈な争いが予想される。各階級の主な出場選手と見どころを探ってみた。(大会日程は、ここをクリック


男子グレコローマン 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
男子フリースタイル 55kg級 60kg級 66kg級 74kg級 84kg級 96kg級 120kg級
 女    子  48kg級 51kg級 55kg級 59kg級 63kg級 67kg級 72kg級

記録メモ 浜口京子の10連覇 吉田沙保里の「84連勝超え」

 ◎男子グレコローマン

 
【55kg級】

 アテネ五輪代表の豊田雅俊(警視庁)と昨年の覇者・平井進悟(ALSOK綜合警備保障)が、今年の世界選手権代表争いに続いて激戦を展開しそう。

 ユニバーシアード代表の和田宗法(日体大OB)、全日本社会人選手権優勝で昨年の全日本2位の村上文清(自衛隊)、全日本学生選手権優勝の長谷川恒平(青山学院大)、JOC杯と全日本大学グレコローマン選手権優勝の倉本一真(拓大)、国体優勝の村田知也(滋賀・日野高教)ら追う選手の中から殊勲を挙げられる選手が出るか。


 【60kg級】

 シドニー・アテネ両五輪代表の笹本睦(ALSOK綜合警備保障=
写真右)が6連覇に挑む。今年は8月に強豪のアルメン・ナザリアン(ブルガリア=1ヵ月半後の世界選手権で優勝)を撃破した。世界王者に匹敵する実力を見せてくれるか。

 全日本社会人選手権優勝の森山振一郎(自衛隊)、学生二冠王で国体2位の松本隆太郎(日体大)、昨年の全日本2位の北岡秀王(日体大)らの奮起が望まれる。


 【66kg級】

 アジア選手権2位の飯室雅規(自衛隊)が6連覇を目指す。ユニバーシアード代表の藤村義(自衛隊)や2年連続学生二冠王の江藤紀友(拓大)らが阻むことができるか。


 【74kg級】

 世界選手権代表の岩崎裕樹(銀水荘)、昨年優勝でアジア選手権3位の鶴巻宰(国士大=
写真左)、一昨年の王者で今年の国体王者の菅太一(警視庁)の争いになりそう。実力は接近しており、予断を許さない闘いとなりそう。

 全日本学生選手権優勝の岡本鉄平(拓大)、全日本大学グレコローマン選手権優勝の後藤秀樹(日体大)らの中から3選手を脅かす選手が出現するか。


 【84kg級】

 世界選手権8位の松本慎吾(一宮運輸)が7年連続7度目の優勝を目指す。グレコローマンでの7連覇は大会史上3位タイの記録。1位・森山泰年の14連覇はまだ遠いが、2位の宮原厚次の8連覇を視野にいれることができるか。

 昨年2位の斎川哲克(日体大)は、肩の負傷でユニバーシアードを辞退するなど長期間戦列を離れた。完治さえしていれば、松本のが城を崩す一番手だが…。


 【96kg級】

 世界選手権の代表を争った加藤賢三(自衛隊)と森角裕介(長野・蓼科高教)の争いが続きそうだが、学生二冠王で世界ジュニア選手権出場の山口竜志(拓大)が、国体で森角を撃破して優勝。勢力図に変化を起こしそう。一気に日本一をつかめるか。


 【120kg級】

 世界選手権代表の沢田直樹(徳山大ク)、昨年優勝の新庄寛和(国士舘ク)、過去4度優勝の鈴木克彰(警視庁)、学生二冠王の社藤哲也(日体大)らが優勝を争うことになりそう。アジア・ジュニア選手権3位の竹内勝信(国士大)の踏ん張りも期待される。


 ◎男子フリースタイル

 
【55kg級】

 初出場の世界選手権で5位に入賞し、世界王者への道を進む松永共広(ALSOK綜合警備保障)が首ひとつリードしているだろう。全日本選抜選手権2位の杉谷武志(自衛隊)、ユニバーシアード5位の清水聖志人(クリナップ)や世界ジュニア選手権2位の稲葉泰弘(専大)らが食いつくことができるか
(写真右は、左から杉谷、松永、稲葉、清水)

 松永と同期の田岡英規(自衛隊)は、全日本社会人選手権優勝、サンキスト国際オープン優勝と負傷から完全復活。大舞台でどんな闘いを見せるか注目される。国体優勝の斉藤将士(日大OB)、2年生でインターハイ王者に輝いた小田裕之(青森・光星学院高)らのファイトにも注目したい。


 【60kg級】

 アテネ五輪銅メダルの井上謙二(自衛隊)は不出場。昨年優勝の小島豪臣(日体大)は1階級アップ。世界選手権代表の湯元健一(日体大)、学生王者の高塚紀行(日大)、国体で勝ち、全日本大学選手権で1年生王者に輝いた大沢茂樹(山梨学院大)らの学生選手によって覇権が争われるか。アジア・ジュニア王者の大沢が国体と全日本大学選手権で高塚や湯元を撃破して力を伸ばしているが…。

 元全日本王者で国体2位のベテラン、関川博紀(新潟・県央工高教)、全日本社会人選手権優勝の大館信也(国士舘ク)ら社会人選手はどう闘うか。


 【66kg級】

 03年世界3位、アテネ五輪5位の池松和彦(K-POWERS)に対し、学生二冠王の佐藤吏(早大)、世界ジュニア選手権3位の藤本浩平(拓大)、昨年2位の金渕清文(青森・光星学院高教)らが挑む形となりそう。

 ほかに、昨年60kg級で勝った小島豪臣(日体大)が階級を上げて挑んでくる。この階級での闘いぶりが注目される。


 【74kg級】

 小幡邦彦(ALSOK綜合警備保障)が7連覇に挑む。04年世界学生選手権3位の長島和幸(クリナップ)や今年のユニバーシアード出場の高橋龍太(自衛隊)、昨年の学生二冠王の加藤陽輔(日体大OB)らが阻止できるか。


 【84kg級】

 世界選手権代表の山本悟(岡山・烏城高教=
写真左の右選手)に、学生王者の松本真也(日大)、昨年優勝の磯川孝生(拓大)が挑む。6月の明治乳業杯全日本選抜選手権は、山本が学生の有望株の2人を撃破して日本代表に輝いた。今回の対戦はどうか。


 【96kg級】

 2連覇中の小平清貴(警視庁)に、学生二冠王の米山祥嗣(日体大)が挑む。ユニバーシアード出場など経験を積んでいる米山がどこまで食いつけるか。


 【120kg級】

 世界選手権代表の田中章仁(FEG)が5連覇を目指す。昨年、高校2年生で2位に入った荒木田進謙(青森・光星学院高)の成長具合はどうか。全日本学生選手権優勝の北村克哉(専大)の奮起も期待される。


 ◎女 子

 
【48kg級】

 世界選手権で銅メダルを獲得した坂本真喜子(和光ク)に、アテネ五輪銀メダリストの伊調千春(中京女大)が立ちはだかる。今年は51kg級で闘っていた伊調は、北京五輪を見越して本来の階級に落としてきた。アテネ五輪前の激闘が再現されるか
(写真右=アテネ五輪代表決定プレーオフ、青が伊調)

 ユニバーシアード2位の船津友里(東洋大)、世界ジュニア選手権44kg級3位の進藤恵(堺女短大)、同選手権出場の片渕有紀(同志社大)らが2人の争いに割って入れるか。


 【51kg級】

 伊調千春が階級を落としたことで、世界チャンピオンの坂本日登美(自衛隊)が頭ひとつ抜け出した形となった。ユニバーシアード出場の甲斐友梨(中京女大)、学生チャンピオンの赤坂幸子(福岡大)、世界ジュニア選手権2位の鈴木七恵(早大)らがどこまで食いつくか。


 【55kg級】

 アテネ五輪金メダリストの吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)が今年も好調。ワールドカップ、アジア選手権、ユニバーシアード、世界選手権と優勝を重ねた。2005年最後の大会をすっきり勝ちたいところ。

 学生チャンピオンの松川知華子(日大)、アジア・ジュニア選手権優勝など今年3度の国際大会を積んだ柴田瑞穂(中京女大)、1階級アップした03年アジア51kg級チャンピオンの服部担子(中京女大ク)がどこまで食いつけるか。

記録メモ

 吉田沙保里選手は、国際大会では「93戦無敗」を継続中だが、その間、国内の大会で何度か負けている。しかし2001年全日本選手権の3位決定戦以来負けておらず、ことしの世界選手権までで83連勝をマークしている。あと1勝すると、柔道の谷(旧姓田村)亮子選手が1992年福岡国際女子大会から96年アトランタ五輪準決勝までに記録した「84連勝」に並び、日本の女子格闘技選手としては、最高の記録になる。

 
吉田沙保里選手の話「言われるまで意識にはありませんでしたが、谷亮子選手は憧れで、ずっと目指していた選手です。連勝記録を超えられるのはとても光栄に思います。ここまで記録を伸ばせたことで、谷亮子選手に一歩近づいたんだなあ、と実感し、うれしく思います。でも、ここで終わるのではなく、北京オリンピックまで無敗でいく気持ちでいることに変わりはありません」

 【59kg級】

 6年ぶりに世界チャンピオンに返り咲いた正田絢子(ジャパンビバレッジ)に、一昨年まで5連覇していた岩間怜那(ALSOK綜合警備保障)、この階級を含めて4度世界一になっている山本聖子(ジャパンビバレッジ=
写真右)が挑む。

 63kg級で世界ジュニア選手権を制した西牧未央(愛知・至学館高=
写真左)、同級の世界ジュニア・チャンピオンの山名慧(中京女大)、全日本学生選手権で山名を下して優勝した島田佳代子(日大)、カナダカップ優勝の大島貴子(福岡大)も控えており、女子最大の激戦階級であることは間違いない。


 【63kg級】

 吉田沙保里とともに今年も4大大会を無傷で勝ち続けた伊調馨(中京女大)が強さを発揮するか。学生チャンピオンの松川絵里香(日大)、同2位の石井千恵(中京女大)らがどこまで食いつけるか。


 【67kg級】

 昨年優勝の斉藤紀江(ジャパンビバレッジ)は不出場。斉藤をジャパンクイーンズカップとプレーオフで破って世界選手権へ出場した坂本襟(ワァークスジャパン=
写真左)を狙うのは、一昨年の覇者・菅原美々(警視庁)やユニバーシアード優勝の新海真美(中京女大)。新海はアジアと世界のジュニア選手権も制しており力をつけている。


 【72kg級】

 世界V5の浜口京子(ジャパンビバレッジ)が10年連続10度目の優勝を目指す。大会史上2人目の偉業をすっきりと飾りたい。村島文子(中京女大ク)はアジア選手権2位、ユニバーシアード3位と力を伸ばしており、秋にはカナダで長期修行を敢行し浜口に挑む。世界とアジアのジュニア選手権出場の機会を得た田中希枝(中京女大)の成長具合は?

記録メモ

 浜口京子選手が優勝すると、1996年大会以来、10年連続10度目の優勝になり、これは女子では初、男女合わせるとレスリング史上2人目の記録。過去の記録上位選手は下記の通り。

《過去の優勝回数上位選手》
14度 森山泰年(1982〜95年、グレコ82kg級・90kg級)
10度 風間栄一(1934〜38、46〜50年、フリー・ライト級、ウエルター級)
高田裕司(1973〜80、84、90年、フリー52kg級)
小幡弘之(1988・89・91・93〜99年、フリー130kg級)
9度 宮原厚次(1979・81〜88年、グレコ48kg級・52kg級)
赤石光生(1984・86〜93年、フリー62kg級・68kg級・74kg級)
浜口京子(1996〜2004年、女子70kg級・75kg級・72kg級)

《過去の連続優勝上位選手》
14年連続 森山泰年(1982〜95年、グレコ82kg級・90kg級)
9年連続 浜口京子(1996〜2004年、女子70kg級・75kg級・72kg級)
8年連続 宮原厚次(1981〜88年、グレコ52kg級)
赤石光生(1986〜93年、フリー68kg級・74kg級)

 
浜口京子選手の話「今年の全日本選手権大会は、私の人生で、とても思い出に残る大会になると思います。10年連続して出場できたことは(注:出場は13年連続13度目)、沢山の方々から御指導・御声援して戴いたからだと思います。私はレスリングに出合い、この十数年、毎日生きがいを感じることができています。感謝の気持ちでいっぱいです。皆さんに笑顔で優勝報告ができるよう頑張りますので、応援を宜しくお願い致します。レスリングに感謝!」




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