【特集】浜口京子、10年連続優勝の歩み
女子72kg級で優勝した浜口京子選手(ジャパンビバレッジ)が史上2人目の全日本10連覇を達成した。10年間を振り返ってみた。
【1996年】=70kg級
決 勝 ○[フォール、2:56]斉藤 紀江(茨城・土浦日大高) |
前年の全日本選手権は、茨城・土浦日大高柔道部でレスリングに参戦してきた斉藤紀江に屈辱のフォール負け。しかし、その後、世界選手権に初出場し、この大会の1か月前にはアジア選手権で優勝して力をつけた。リベンジ戦。
この年の全日本選手権は、アジア選手権の日程とのからみで、予選会1位の選手とアジア選手権代表選手との間で決勝が争われ、明治記念館で行うという趣向を凝らした大会となった。浜口は前年同様、苦戦したものの、最後はきっちりフォール勝ち。4度目の全日本選手権で初めての日本一に輝いた。
【1997年】=75kg級
1 回 戦 ○[フォール、0:08=3-0]石上 茜(北海道・和寒高) 決 勝 ○[7−0]住谷 礼子(東洋大) |
階級区分が変更され、クイーン・オブ・レスリングを目指して最重量級を選択。その第一戦は、斉藤紀江と同じく土浦日大で柔道に親しみ、東洋大でレスリングに専念した住谷礼子が決勝の相手。しかし7−0で難なく退け、日本の最強の地位を確立した。
前年の世界選手権(70kg級)では、世界チャンピオンのクリスチン・ノードハーゲン(カナダ)に力負けすることなく戦え、世界でもやれるという手ごたえをつかんだ時期。最重量級での初の日本一は、約3か月半後の世界選手権での世界一につながった。
【1998年】=75kg級
1 回 戦 BYE 2 回 戦 ○[フォール、0:27=7-0]野口 亜沙美(茨城・石岡一高) 決 勝 ○[フォール、0:38=3-0]佐々木 昌子(高岡法科大) |
1997年7月の世界選手権で、V5の無敵の選手、劉東風(中国)をフォールで下し、堂々の世界一へ。父・アニマル浜口さんが肩車をしたシーンはスポーツ紙の1面を飾り、これまで以上に世間的な注目も集まり始めた。
そんな中で行われた“凱旋試合”。決勝は2年前と同じく明治記念館で実施。髪を金色に染めた浜口は、世界チャンピオンとして出場した初めての全日本選手権で、2試合を圧勝して優勝。抜群の強さで3年連続3度目の優勝を遂げた。
【1999年】=75kg級
1回戦 ○[フォール、2:11=5-0]佐々木昌子(高岡法科大) 2回戦 ○[フォール、0:45=5-0]須能佳奈子(茨城・土浦日大高) 3回戦 ○[フォール、0:19=4-0]坂本恵美(茨城・土浦日大高) |
従来の春開催から、男女同時開催を視野にいれて12月開催へ(この年は、男子がシドニー五輪の世界予選のからみで11月開催となり、男女同時開催とはならなかった)。
前回の全日本選手権優勝からこの大会までの間に、98年世界選手権、99年世界選手権で優勝を重ね、押しも押されもせぬ“世界のキョウコ”へ成長した浜口は、3試合とも第1ピリオドでフォール勝ちという圧勝。堂々の4連覇を達成し、世界一の選手の強さを見せつけた。
【2000年】=75kg級
決勝(初戦) ○[フォール、4:17=10-0]富岡多恵子(国士大) |
この年の世界選手権では、宿敵クリスチン・ノードハーゲン(カナダ)に敗れ、世界一を転落。再起をかける大会となった。2選手出場となった大会は、茨城・土浦日大〜国士大で柔道に励み、レスリングに転向してきた富岡多恵子。
前年の国体スペシャルマッチでは1分49秒でフォールし、この年4月のジャパンクイーンズカップでも2分42秒で退けた相手だが、レスリングをしっかり練習した富岡は強くなっており、第2ピリオドへもつれてしまった。国内で第2ピリオドまでもつれたのは、97年全日本選手権決勝の住谷礼子戦以来で、その後は03年全日本選手権の斉藤紀江戦までない。
しかし、最後は地力を発揮してフォール勝ち。5連覇を達成した。
【2001年】=75kg級
リーグ戦1回戦 BYE リーグ戦2回戦 ○[フォール、0:51=4-0] 松井貴子(富山・富山一高) リーグ戦3回戦 ○[フォール、0:11=3-0] 新海真美(滋賀・日野高) リーグ戦4回戦 ○[フォール、0:33=3-0] 越智雅子(愛媛県協会) リーグ戦5回戦 ○[フォール、1:32=7-0] 村島文子(中京女大) |
この年の9月、国際オリンピック委員会(IOC)が04年アテネ五輪でのレスリング女子の採用を決定。大きな目標ができたが、11月にブルガリアで行なわれた世界選手権では4位に転落。五輪種目採用決定により、他国の強化もこれまで以上になることが予想され、いばらの道が予想された。
しかし、国内では他の選手の追随を許さず、5選手参加のリーグ戦で、一番かかった試合が1分32秒。文句なしの内容でアテネ五輪へのスタートを切った。
【2002年】=72kg級
リーグ1回戦 ○[フォール、1:35=9-0] 新海真美(滋賀・日野高) リーグ2回戦 ○[フォール、1:11=6-0] 田中希枝(愛知・中京女大付高) リーグ3回戦 BYE リーグ4回戦 ○[フォール、0:35=5-0] 松井貴子(富山・富山一高) リーグ5回戦 ○[フォール、1:40=5-0] 村島文子(中京女大) |
アテネ五輪の女子採用によって階級区分の変更が行われ、75kg級は72kg級へ変更された。浜口にとって最適の階級となった。そんな追い風にのり、この年の10月に行なわれたアジア大会で圧勝優勝。11月の世界選手権で3年ぶりに世界一に輝き、順調にアテネ五輪のVロードを突っ走った。
その締めくくりの全日本選手権は、4試合をいずれも第1ピリオドでフォール勝ちするという圧勝。国内外での敵なしを見せつけた。
【2003年】=72kg級
準決勝 ○[フォール、1:05=4-0] 二宮美紀(フェニックスビジネス) 決 勝 ○[フォール、4:48=10-0] 斉藤紀江(ジャパンビバレッジ) |
この年の9月にニューヨーク(マジソン・スクエア・ガーデン)で行われた世界選手権で2年連続5度目の優勝を達成。アテネ五輪の出場権を獲得した。一方、その直後にあったワールドカップでは3位に転落し、気を引き締めて臨んだ大会。
アテネ五輪での女子の実施階級は4階級であるので、67kg級の世界選手権7位だった斉藤紀江が階級を上げて挑んできた。浜口にとっては、95年の全日本選手権で土をつけられた相手だ。しかし72kg級の世界チャンピオンの実力は、1階級下の世界7位の選手の実力を大きく上回っていた。
第2ピリオドまでもつれたものの、しっかり勝って8連覇を達成。この2か月後のジャパンクイーンズカップでも斉藤を下し、アテネ五輪の代表を決めた。
【2004年】=72kg級
リーグ1回戦 BYE リーグ2回戦 ○[フォール、0:38] 田中希枝(愛知・中京女大付高) リーグ3回戦 ○[2−0(5-0,TF6-0)] 村島文子(中京女大) |
アテネ五輪では金メダルを逃してしまったが、その後のワールドカップでも優勝。変わらない強さを見せるとともに、五輪後のさわやかな言動が受け、変わらぬ人気をキープ。注目度は依然としてレスリング界のナンバーワン。
新ルールで行われた大会。試合時間が1ピリオド2分と短くなっても、その強さは変わらず、2試合ともフルタイムにもつれることなく快勝した。9年連続優勝は、高田裕司、宮原厚次、赤石光生の8連覇を抜き、森山泰年の14連覇に次ぐ単独2位。女子では前人未到の大記録だ。
【2005年】=72kg級
準決勝(初戦) ○[フォール、1P0:31(F3-0=0:31)]●榎本美希(三重・四日市四郷高) 決 勝 ○[2−0(1-0,4-0)]●村島文子(中京女大ク) |
世界選手権では無念の銀メダルに終わったが、決して実力が衰えていたわけではない。世界一奪還は目の前。休む間もなく前進を続ける浜口に、全日本選手権では「10連覇」というプレッシャーに襲われたが、地力を十分に発揮し、史上2人目の偉業を達成した。この年もまた失ポイント0の完全優勝で、1997年大会以来、9年連続でポイントを失っていないという離れ業も達成した。
10年間の実績と功績が評価され、両スタイルの最優秀選手に贈られる天皇杯を受賞。女子では3人目。世界一奪還へ向けての期待がこめられていることは言うまでもない。
【20年】=72kg級
準決勝(初戦) 決 勝 |
【20年】=72kg級
準決勝(初戦) 決 勝 |
【20年】=72kg級
準決勝(初戦) 決 勝 |
【20年】=72kg級
準決勝(初戦) 決 勝 |