【特集】「五輪より、まず来年の世界選手権」…男子グレコ84kg級・松本慎吾



 ▼決勝
松本慎吾(一宮運輸)○[2−0(TF8-0=1:09,TF6-0=1:17)]●萬寛史(自衛隊)

 《試合経過》

 [1P]松本が相手を崩してテークダウンを奪い、腕を取ってニアフォールへ。一本背負いを仕掛けてニアフォールを奪って5−0とした松本は、グラウンドの攻撃で豪快な俵返しを決めた。

 [2P]萬の投げをかわしてバックを取った松本は、ローリングで2点を追加。グラウンドの攻撃になると、豪快な俵返しで投げ、試合を決めた。

 男子グレコローマンの第一人者、84kg級の松本慎吾(一宮運輸)が実力の違いを見せつけて7連覇を達成した。初戦の斎川哲克(日体大)戦こそ豪快なリフト技が不発に終わったが、準決勝からエンジン全開。十八番の俵返しを連発すると、決勝でも新鋭の萬寛史(自衛隊)をまったく寄せ付けなかった。

 若手選手をまったく問題にしない圧倒的な勝利にも、不動の王者は涼しい顔で口を開いた。「国内の大会に目標はありませんから。今日もただ勝ったという感じ。俵返しが何度も出た? 国内であればああいう試合になって当然のことです」。

 本人の言葉通り、課題は世界の大舞台でいかに勝つか、ということに尽きる。昨年のアテネ五輪は7位。今年の世界選手権も8位に終わった。いずれも世界王者クラスと競り合いを演じてはいるが、あと一歩のところでメダル争いに絡めない状態だ。

 海外でなかなか結果に恵まれない松本は「世界選手権はメダルを取りにいったのに、8位に終わって悔しい思いをした。自分の得意技は俵返し。外国人選手が相手であっても国内と同じくらい大きくリフトできればメダルが見えてくると思う」とスタイルは変えずに、得意技に一層の磨きをかけることで活路を見出す考え。

 北京五輪について問われると、「オリンピックよりまずは来年の世界選手権」と即答。世界選手権でメダリストとなり、五輪では金メダルを狙う腹積もりだ。

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)




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