【特集】「姉が勝ったので、自分も絶対に優勝するつもりだった」…女子63kg級・伊調馨



 ▼決勝
伊調馨(中京女大)○[フォール、1P1:24(F6-0=1:24)]●松川絵里香(日大)

 《試合経過》

 [1P]伊調が組み合って正面タックルで倒して3点を獲得。またさきでニアフォールへ追い込み、6−0としたが引き続きフォール狙い。最後は上四方固めへ持ち込み、フォールを決めた。

 世界の女子63kg級をリードする伊調馨(中京女大)が危なげない試合内容で4年連続4度目の優勝を果たした。

 準決勝をわずか54秒でフォール勝ちすると、全日本学生王者の松川絵里香(日大)との決勝も、終始攻め続けて第1ピリオドでフォール勝ち。「今日は失点をゼロに抑えて、自分から攻めるという思った通りのレスリングができた」と納得の内容で1年を締めくくった。

 2日前に行われた48kg級で、姉の千春が坂本真喜子(和光クラブ)との激戦を制して優勝。「千春が勝ったので自分も絶対優勝するつもりだった。千春の負けは自分の負け。千春の勝ちは自分の勝ちだと思っている」。二人三脚で歩み続ける姉の奮闘に後押しされた勝利でもあった。

 今年は吉田沙保里同様、3月のジャパンクイーンズカップに始まり、5月のワールドカップ、アジア選手権、8月のユニバーシアード、9月の世界選手権のすべてに優勝した。このクラスでは頭一つ抜け出したようにも見えるが、本人は「05年はまだ気持ちの乗っていない選手がいたと思う。来年から北京に向けた本当の戦いが始まると思う」と気持ちを引き締める。謙虚な姿勢こそが安定した強さを生み出す源なのだろう。

 圧勝の今大会でも細かい部分で課題を見つけている。「今日の決勝の相手は手首や腕をつかんでくる選手。警戒はしていたけれど、取られてしまう場面があった。このあたりを来年は修正していきたい」。向上心あふれる世界王者に死角は見当たらない。

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)




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