【特集】「精いっぱい戦って金メダルを取ります」…伊調馨


 【63kg級】伊調馨(中京女大) 優勝

 予選1回戦 ○[フォール、1:45=7-0]島田佳代子(埼玉・埼玉栄高)
 予選2回戦 ○[Tフォール、2:56=10-0]石井千恵(中京女大)
 予選3回戦 ○[フォール、1:04=7-0]庄末美恵子(東京・代々木ク)
 準 決 勝  ○[フォール、1:26=3-0]鈴木博恵(京都・立命館宇治高)
 決    勝 ○[6−1]正田絢子(東洋大)

   

   


 勝利を決めた直後、「勝った!」と叫んだ。「何だか叫びたくなって、ほえたくて…。本当にほえてしまいました。今から考えると、ちょっと恥ずかしいです」と、そのシーンを振り返った伊調。直前の試合で姉であり、全日本選手権とプレ五輪で優勝して五輪代表濃厚といわれた48kg級の千春が負け、「自分まで負けたらいけない」と、考えていなかったプレッシャーが襲われたという。

 しかし、その目はマットサイドで応援してくれていた姉の姿をとらえており、エネルギーをしっかりと受け止めることができた。1点を先制された時も焦りはなかった。「また、やって(先制されて)しまいましね」とスロースターターの克服という課題が残ったものの、「全日本選手権のときより大差をつけられたので、100点満点ではないけど上出来です」と言う。

 15歳の春、「オリンピックへ出るため」として、親元を離れて青森から愛知へ向かった。寂しさも辛さも、すべてエネルギーに変えてマットの上で燃やしてきた4年間。世界V2を達成し、日本女子レスリングの威信をかけてアテネへ向かうことが決まった。「日本を背負って立つ人間として、精いっぱい戦って金メダルを取ってきます」と言い切り、自覚は十分だ。

 だが、当面の気がかりは姉のこと。「プレーオフで頑張ってもらい、一緒にオリンピックへ行きます。一緒に金メダルを取ります」。ちょっぴり声を詰まらせながら話し、姉のサポートにも力を注いで姉妹出場の実現へ全力を尽くす腹積もりだ。

(取材・文=宮崎俊哉、樋口郁夫) 




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