【特集】「(吉田に)金メダルを取ってほしい」…山本聖子


 【55kg級】山本聖子  2位

 予選1回戦 ○[フォール、6:00=5-3]松川知華子(日大)
 予選2回戦 ○[フォール、2:39=7-0]岩間怜那(リプレ)
 予選3回戦 ○[Tフォール、3:23=10-0]松川知華子(日大)
 決    勝 ●[1−6]吉田沙保里(中京女大)

 吉田沙保里との決戦に敗れ、世界V4の山本聖子がアテネ五輪の道を断たれた。予選は最高に調子がよかった。59kg級全日本チャンピオンの岩間怜那をからもフォールを奪い、打倒吉田にかける体勢は十分だったが、最後に宿敵の執念に涙を飲んだ。

 試合終了と同時にマットに横たわり、天を仰いだ山本。表彰台では、一瞬だが全力を尽くして戦って悔いなしといった満足そうな表情も見せ、吉田に「応援しているから」と声もかけた。だが多くの報道陣が待つ記者会見場へ来ると、「悔しい。体全体でもう終わったと感じた」と声を詰まらせた。

 1999年世界選手権で初の世界一に輝き、金メダルを持って帰国する最中に母が他界した。残された父を五輪につれていくことが夢だった。姉妹でその夢をかなえることができず、「親不孝ですね」と声を振り絞った。

 23歳。来年以降の世界選手権でも優勝は十分に狙える。4年後の北京五輪では女子の階級が4階級のままということは考えられず、吉田が現役続行していても、今度こそ2人で五輪金メダルを狙うことも可能だが、激戦のあとでは何も考えられまい。最大のライバル、吉田に「自分のレスリングと人間の幅を広げてくれた。金メダルを取ってきてほしい」とエールを送り、“第1ステージ”の幕を閉じた。


(取材・文=宮崎俊哉、樋口郁夫) 




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