【特集】3人の元世界女王が資格獲得…女子五輪第2次予選第1ステージ

ウイリアム・メイ   
(元国士大コーチ、    
チェコ・プラハ在住)


  アテネ五輪の出場権を目指した女子の五輪第2次予選第1ステージが3月6〜7日、チュニジアの首都チュニスのエルマンザー・スポーツ・パーラスで41の国と地域から105選手が参加して行われ、世界選手権6度優勝の72kg級のクリスチーン・ノードハーゲン(カナダ)ら元世界チャンピオン3選手が優勝。新たにアテネ五輪へキップを獲得しました。

 ノードハーゲンは調子がよかったようで、72kg級の準決勝までの4試合をフォールかTフォールで勝ち進みました。決勝ではスベトラーナ・サヤエンコ(ウクライナ)に3−2の判定勝ちでしたが、リラクッス・ムードで危ないところはありませんでした。同級の3位決定戦ではゴウゼル・マノオウロバ(ロシア)がヘレン・オパラ(ナイジェリア)にフォール勝ちし、ロシアが女子全階級の資格を取りました。
(写真左は、左からサヤエンコ、ノードハゲン、マノオウロバ)

 この大会では、ロシアのほか、ウクライナと中国が全階級で出場資格が決まり、イタリア、韓国、スェーデン、タジキスタン、ベネズエラが1枚目のキップを取りました。

 48kg級の決勝は、昨年の欧州選手権の決勝と同じ対戦となり、一昨年世界チャンピオンで負傷で戦列を離れていたブリジット・ワグナー(ドイツ)がリリア・カスカラコバ(ロシア)と延長の末、相手の投げの失敗によって3−0で勝ちました。3位決定戦では、マイェリス・カリパ(べネズエラ)が02年アジア大会2位のリディア・カラムチャコバ(タジギスタン)と4−4の協議判定の末、アテネ五輪へのキップを手にしました。
(写真右は、左からカラコバ、ワグナー、カラムチャコバ)

 この階級では、56kg級などで4度世界チャンピオンになっているグドルン・ホイエ(ノルウェー)、1997年の世界選手権51kg級で優勝したヨアナ・ピアセッチカ(ポーランド)、02年51kg級世界3位のイダ・ヘレストロム(スェーデン)らが出場権が取れず、最後の予選となるマドリッド大会(3月20〜21日)を目指すことになりました。

 55kg級決勝では、02年アジア大会の銀メダリストのリー・ナラエ(韓国)が一本背負いでディレッタ・ギアムピコロ(イタリア)にフォール勝ちして優勝しました。リーは韓国女子レスリング初の五輪キップを取り、01年世界2位のギアムピコロはイタリア最初のキップを手にしました。

 同3位決定戦では、元欧州チャンピオンのタチアナ・ラザレバ(ウクライナ)が02年世界3位のイダテレス・カールソン(スウェーデン)相手にフォールで勝って、ウクライナの五輪全階級出場を決めました。
(写真左は、左からギアムピコロ、リー、ラザレバ)

 負けたカールソンのほか、世界V4のアンナ・ゴミス(フランス)、02年アジア大会銅メダリストのオトゴニャルガル・ナイダン(モンゴル)らがマドリッド大会へ向かいます。

 63kg級では、01年の世界チャンピオンのメン・リリ(中国)が、過去2度世界一になっているサラ・エリクソン(スウェーデン)と決勝を争い優勝。昨年の世界選手権で3階級の出場権を獲得した中国に全階級出場をもたらしました。負けたエリクソンも五輪出場資格獲得となりますが、女子レスリングに初期から取り組んでいたスウェーデンは、これが初の資格獲得です。

 元ロシアの選手で96年世界2位のナタリア・イワノバ(タジギスタン)が3位となり、同国に初めての出場権をもたらしました。(写真左は、左からエリクソン、リリ、イワノバ)

 一方で、62kg級などで世界を5度制したニコラ・ハートマン(オーストリア)、67kg級などを2度制したリセ・レグランド(フランス)、昨年の欧州チャンピオンのレネ・オーネス(ノルウェー)、世界で4度メダリストになっているステファニー・グロス(ドイツ)の強豪が資格を逃し、マドリッド大会に五輪出場をかけます。激戦になりそうですが、オーネスは腕をけがしており、同大会の出場は微妙です。

 ノードハーゲンが制した72kg級では、1月のプレ五輪2位のマイダー・ウンダ(スペイン)がイタリアとオーストリアに負けて18位タイに終わる不調でした。ポーランドも、モニカ・コワルスカがノードハゲンに負けてまだ資格を取れていませんが、01年75kg級世界チャンピオンのエディタ・ビトコウスカは減量がきつく(通常体重は80kgぐらいだそうです)、今回は出場せずにマドリッド大会だけにかける作戦だそうです。

 ナイジェリアの選手は3階級で予選リーグを突破しましたが、72kg級のオパラの4位が最高でした。同国の48kg級のサミー・オジティは、シドニー五輪で優勝したダニエル・イガリ(ナイジェリアからカナダへ帰化)の妹だそうです。(カナダのレイ・バーリング・コーチ談)。

(撮影:宮崎俊哉)




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