【特集】さあ決戦! 伊調千春VS坂本真喜子




 全日本女子チームは4月9日から東京・国立スポーツ科学センター第2次合宿を行い、4月13日にプレーオフで女子48kg級日本代表を争う伊調千春と坂本真喜子(中京女大)がともに必勝を宣言した。(写真前列の最右端が伊調千春、その右が坂本真喜子)

 練習を終え、報道陣の前に表れた両者は、決戦までまだ4日あることもあって、ともにリラックスムード。伊調が「リラックスできている状態」、坂本は「試合へ向けてこれから気持ちを高めていきます」と、努めて冷静なコメントで会見をスタート。

 伊調は2月のジャパンクイーンズカップの敗因を、全日本選手権とプレ五輪で勝ったことで「負けられない」という気持ちが強すぎたと分析。全日本選手権の時にあった「負けてもいい」というリラックスさがなく、挑戦者の持つ気持ちが欠けていたことを挙げた。一方で「リラックスの中に闘争心を持つことが必要」とも話し、「がむしゃらに前で出るだけではダメ。崩したりして、攻めることを忘れないで戦いたい」と、手の内の一端を明かした。

 いま、一番リラックスできるのは、妹の馨の顔を見ることだという。「妹というより、一人のアスリートとして尊敬しているし、追いつきたい存在。顔を見るだけでリラックスできる」と、頼っている。坂本のセコンドに、かつて苦手とした坂本日登美(真喜子の姉で世界V2)がつくということには、「クイーンズカップの時は気になったけど、今は気にならない。相手が何をするかは問題じゃない。自分のレスリングをするだけ」ときっぱり言い切った。

 一方の坂本は、全日本選手権の敗因を「タックルができなかった」と分析。姉と取り組んで功を奏したタックル練習を引き続きやってきた。「千春先輩の弱点も、姉と研究済みです」と話し、今度は伊調もタックルを警戒してくるだろうが、「動かして入るタックルを狙います」とずばり。

 坂本と同じく「姉がついていると安心します。いいアドバイスももらいます」とのことで、リラックス方法も「姉と話すこと」と、伊調とほぼ同じ。

 いやがおうでも2組の姉妹による全面対決となりそう。しかし伊調が「正々堂々と戦い、試合後には、『ありがとう』と言えるような試合をしたい」と口にしたように、2人の間にドロドロとした遺恨はない。つちかってきた実力のすべてをかけた決戦は、どちらが勝っても、マットの上で最高に美しい握手を見せてくれるだろう。(取材・文=樋口郁夫)



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