女子五輪代表チームが滝打ち修行


       


 浜口京子、伊調馨、吉田沙保里、伊調千春のアテネ・オリンピック代表をはじめとする全日本女子レスリングチームは6月26日から7月5日まで、富山県神通挟の春日温泉で合宿を実施しているが7月2日、地元の石崎産業株式会社(アイザックグループ)が主催し、同社の石崎由則社長、中斎忠雄・大沢野町町長出席のもとで壮行会が行われた。

 あいさつに立った日本協会の福田富昭会長は、大沢野町の歓迎に感謝するとともに、選手たちを激励。「プレッシャーのない選手はいない。それを乗り越え、今までやってきたことを信じ、自分のレスリングを力一杯やってほしい」と語った。選手たちは、高級リゾートホテル・リバーリトリート雅樂倶でごちそうを満喫。合宿の疲れを吹き飛ばした。

 合宿公開日となった3日は、早朝の2時間にわたるトレーニングのあと、まずは陶芸に挑戦。福田会長が素焼きの皿に「夏草に負けじとめざす金メダル」と書くと、浜口はアテネの空色に染めたとっくりに「8月23日美酒」、吉田は皿に「絶対勝」、伊調千春は小鉢に「根性」、馨も小鉢に「感謝」とそれぞれの思いを込めて記した。

 午後は大岩山日石寺に移動。不動明王に護摩(ごま=密教の儀式で、火を焚き仏に祈ること)祈祷を行い、いよいよメーンイベントの滝修行。体感温度10度という冷たさに加え、7メートル高さから落下する滝に恐れをなしていた選手たちも、実際にやってむると、心が清められ、アテネ・オリンピックに向けての決意をあらためて固めることができたようだ。


 福田富昭会長の話「滝に打たれるのは私自身、初めての経験でした。選手たちはもちろん、コーチ陣にとってもいい経験になったと思います。度胸がつき、気合が入ったことでしょう。ここまできたら、大切なことは精神的なもの。やる気、自信、プレッシャーをはねのける気持ち、勇気、挑戦心、恐怖心に打ち勝つ心。護摩を炊いていただき、滝に打たれたことによって、覚悟が決まったはずです。これからは、どんな練習でも常に相手を想定して、やりのこしたことがないか一つ一つ確認しながら、打ち込んでもらいたい」

 
浜口京子選手の話「悪いものが全て落ち、煩悩が消えました。護摩を炊いていただいている間も、滝に打たれている間も、ずっと目標を念じていました。アテネに向けて、きちんと気持ちの整理ができたと思います。気合が入りました」

 
伊調千春選手の話「滝の冷たさにびっくりしました。人生で一番の驚きです。滝というのが、あんなに冷たくて、勢いのあるものだと初めて知りました。温泉の打たせ湯とは比べ物になりません。滝に打たれている間、となりで福田会長が『金だ! 金だ!』とずっと叫んでいたので、私も『ハイ、ハイ』と言いながら、『金メダルとるぞ』と念じていました。とっても不思議な気持ちになりましたが、修行の場だけのことはあると思います。心が清められ、すっきりしました」

 
吉田沙保里選手の話「滝が首の後ろにあたって、とても痛かったです。外国人選手のタックルよりもすごいですね。心も体も鍛えられたと思います。陶芸も滝も初めての経験で、とても楽しかったです。うれしくて、得した気分。すっきりしました。アテネで思い切り戦えそうです」

 
伊調馨選手の話「冷たさも痛さも覚悟していましたが、実際滝に打たれると想像以上でした。余計なことは考えず、一心に滝を浴びていたら、モヤモヤしていたものがとれて、すっきりした感じです。これからも練習に励めそうです」

(取材・文・写真=宮崎俊哉)





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