【特集】本場のグレコローマンを見て闘争本能がうずいた!…池松和彦



 決勝トーナメント1回戦で、レオニド・スピリドノフ(カザフスタン)相手に0−2からわずか20秒の間に逆転されてしまった池松和彦(日体大研)は5・6位決定戦で勝って5位を確保した。昨年の世界選手権が銅メダルで、順位を落としたことより、やはりスピリドノフへの負けの屈辱の方が大きい。前夜は「悔しさで眠れなかった」そうで、「ああすればよかった、こうすればよかった」という思いが頭の中をかけめぐったという。

 しかし5・6位決定戦に望むにあたり、和田貴広コーチから「勝ち負けより、どんな試合でも全力を尽くすことが大事だ」と言われ、気持ちを奮い立たせた。地元選手を破っての5位
(写真右)。気分は晴れないものの、勝って大会を終われてホッと一息といったところだ。

 「オリンピックは世界選手権とは違いますね」「まぐれでは勝ち続けられませんね」「レスリングを極めるのは簡単ではないですね」「すぐに北京五輪を目指すと言える人はすごいですね」「(12月の)全日本選手権は、今の段階では出るつもりありません」。あらためてレスリングの奥の深さを感じたといった言葉が続き、今後への闘志がなかなか見えてこなかったが、「いえ、グレコローマン挑戦してみたいって思っています。前へ出る闘志がすごいというか、精神力の勝負といった感じ。やはりレスリングといえばグレコローマンですかね。松本(慎吾)の試合に感動しました」と、世界トップレベルの選手が全力で挑んでくる舞台から、闘争本能が刺激されていることは確かだ。

 口にしたようにグレコローマンでの挑戦になるか、それとも本来のフリースタイルで世界一を目指すかは分からないが、しばしの休養のあと、また闘いの場に戻ってくることは間違いないだろう。世界3位、五輪5位とトップレベルまで来たのだから、ここはとことん世界一を狙ってほしいものだ。

(取材・文=樋口郁夫)


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