「世界選手権以上の大舞台でメダル獲得の経験」…鈴木光・女子強化委員長




 1月28日からロシアでの国際大会出場とドイツでの合同合宿を積んできた全日本女子チームが2月9日、帰国した。直前に72kg級の浜口京子(浜口ジム)の負傷不参加があり4選手だけの遠征となったが、世界のトップ選手との試合や練習を積むことができ、有意義な遠征だったという。鈴木光強化委員長に遠征を振り返ってもらった。

 なお次回の遠征は、3月5日にスウェーデンへ向かい、クリッパン国際大会出場、ポーランドで合宿、ポーランド・オープン出場とこなし、18日に帰国する。



 「最初に向かったロシア・クラスノヤルスクは、シベリアのど真ん中にある街です。ことしは暖冬ということですが、それでも氷点下20度にまで下がっていました。そんな中で、ヤリギン国際大会が行われ、女子は今年から実施あれました。ロシアから54選手が参加。米国などからもトップ選手が参加し、レベル的には高い大会となりました。

 そんな中で、59kg級の岩間怜那(リプレ)の金メダルを筆頭に、63kg級の正田絢子(東洋大)と67kg級の斎藤紀江(ジャパンビバレッジ)が銀メダル、48kg級の坂本真喜子(愛知・中京女大付高)が銅メダルと、全選手がメダルを獲得できました。岩間は予選で1敗を喫してしましましたが、敗者復活リーグで勝ち上がり、最後は優勝しました。結果が出たことで大きな自信になったようです。正田も1階級下の世界チャンピオンを破ったことで価値ある内容を残しました。

 斎藤は、決勝戦は一瞬のすきをつかれて先制され、追いつかなかったもので、全体としては互角に戦えた試合でした。もう少しの積極性がほしい試合でした。ただ、三つ巴となった予選リーグは、明らかに強い方の選手に勝ちながらも、弱い方の選手に負けています。まだ柔道からレスリングへのコンバートが完成されておらず、自分の知らないスタイルでこられるとなすすべがないというのが現状。これの課題に取り組まねばなりません。

 坂本は3位決定戦で米国代表のパトリシア・ミランダ(2000年世界51kg級2位)に勝つ貴重な白星を挙げました。この選手は1月中旬のトウルクァン国際大会(フランス)で世界チャンピオンのブリジット・ワグナー(ドイツ)を破って優勝。この大会でも00・01年世界V2のイリナ・メルニク(ギリシア=ウクライナから国籍変更)を破り、1週間後のデーブ・シュルツ杯(米国)でも勝った昇り調子の選手です。この選手に勝つだけの力を見せてくれたのは、非常に頼もしい限りです。

 ただ、常にこの安定性があるか、というと疑問符がつきます。まだ高校生のレスリングであり、世界のどんなスタイルの選手が相手でも勝つまでには至っていません。これからは世界で勝つレスリングを学んでほしいと思います。

 大会は開会式からして派手で、会場は満員。日本選手にも通訳を伴った記者数名が取材にくるなど、世界選手権以上のムードがありました。大舞台でもあがらないための練習にもなった大会でした。

 その後のドイツでは、ポーランドも来てくれ、3か国で合宿しました。ポーランドは重量級にいい選手が多く、日本で練習相手に恵まれない斎藤にはいい経験になったと思います。ちょっと変わった練習試合もやりました。第1ピリオドは普通に戦い、第2ピリオドはポイントに関係なくクリンチ(コンタクトポジション)でスタート。第3ピリオドもクリンチで始まり、先にポイントを取れば勝ちという試合です。

 全体的には、内容的で日本選手が優っていました。しかし48kg級の坂本は世界チャンピオンのワグナーに振り回され押されていました。やはり、いろんなタイプの選手との経験を積まなければならないと思いました。

 3月の遠征は、今回は試験で不参加だった選手も参加できる予定で、10選手ぐらいでの遠征になると思います。今回と同様、有意義な遠征にしたいと思います」(談)



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