【特集】スーパールーキー2選手が学生界にデビュー



 超高校級の選手として注目を浴びていた磯川孝生(拓大=大分・日本文理大付高卒)と松本真也(日大=京都・網野高卒)が5月13〜16日に東京・駒沢体育館で行われた東日本学生リーグ戦で学生界デビュー。84kg級で両者の対決も実現し、これは磯川が勝った。

 インターハイ2連覇や高校三冠王などの磯川は、2年連続学生王者の長島和幸(早大)には負けたものの、上級生に混じってもずば抜けた実力を披露した。しかし96kg級で出場した専大戦で平沢光秀に惜敗。この1敗によってチームの敗戦もほぼ決まり、悔しい1敗を喫してしまった。

3回戦(84kg級) ●[2−7]長島和幸(早大)
4回戦(84kg級) ○[Tフォール、3:21=10-0]稲葉雅人(東洋大)
5回戦(84kg級) ○[フォール、0:22=2-0]今井晋次郎(中大)
6回戦(96kg級) ●[3-4=6:19]平沢光秀(専大)
7回戦(84kg級) ○[フォール、5:50=4-1]松本真也(日大)
3決戦(84kg級) ○[7−3]田守竹夫(山梨学院大)

 西口茂樹コーチは「オレの起用ミス。1年生にチームの勝敗をかける大役をまかせてしまったことは申し訳なかった。プレッシャーもあったと思う。本人はよくやった」とかばった。1年生が4年生相手に延長にまでもつれる試合をやったのだから上出来と思われるが、磯川は悔しさというより、「チームが優勝できなかったのは、すべて自分のせい。監督や先輩、応援してくれた人に申し訳ない」という気持ちでいっぱいの様子。「よくやった」という気持ちにはなれないようだ。

 最終日は松本と対戦。高校では松本が1階級下の選手だったということもあり、勝って当然という気持ちがあるようだ。「周囲から注目されたみたいだけど、自分にとってはそんなに意味を感じていない」という言葉通りの快勝。「松本だからではなく、(平沢に)負けてふっ切れないものが残っていたから頑張った」そうで、この勝利で落ち込んだ気持ちが盛り上がってきたという。

 終わってみれば、チームの負けにつながった1敗が悔しい。「相手が誰であっても、負けていい、なんて思って試合に出たことはない」ときっぱり話し、この悔しさというか申し訳なさを胸に秘めて、「このあとの試合は全部勝つ。王座(9月)では優勝に貢献し、今回のばん回をしたい」と語気を強めた。さらに、明治乳業カップ全日本選抜選手権決勝で負けた横山秀和(秋田・秋田商高教)へのリベンジも口にした。

 「明日からでも練習したい?」の声に、「今回の試合を分析し、アドバイスを受けて足りないものをチェックしてからです」という答。きちんと考えてレスリングのできる選手のようだ。


 磯川以上の高校8冠王(JOC杯などをいれると10冠)だった松本は、84kg級と96kg級で8試合をフル出場。並外れた実力を見せ、チームも優勝していい形でデビュー戦を終えた。

1回戦(96kg級) ○[フォール、0:40=4-0]森田健司(東農大)
2回戦(84kg級) ○[6−0]増田和広(神奈川大)
3回戦(84kg級) ○[Tフォール、3:47=14-3]稲葉雅人(東洋大)
4回戦(96kg級) ○[Tフォール、2:59=10-0]平沢昌大(早大)
5回戦(84kg級) ○[7−0]尾島好洋(専大)
6回戦(96kg級) ○[Tフォール、4:16=11-0]福田悠(中大)
7回戦(84kg級) ●[フォール、5:50=1-4]磯川孝生(拓大)
決 勝(96kg級) ○[5−4]森山政秀(日体大)

 初の学生の大会で、個人としてのことよりチームが優勝したことがうれしいらしく、「高校時代にくらべて、団結力の強さに驚きました。日大の名にかけて、みんなが一丸となって優勝を目指していました」と、高校生と大学生の実力の違いというよりムードの違いを実感した。

 唯一の黒星となった磯川戦は「組み手で負けていたが、(チームの)決勝進出が決まっていたので、油断があった」と振り返る。しかし「これから何度も戦う相手。次は必ず勝ちたい」と燃えていた。富山英明監督は「タックルに入れても、ポイントにつなげられないことが多い。まだ技術的に学ぶことは多い」と、高校レスリング界最高の偉業を達成した逸材を厳しく評価した。



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