【特集】初の男女の全日本合同合宿開かれる




 5月24日、東京・西が丘の国立スポーツ科学センター(JISS)で、男子アジア選手権代表選手・世界選手権代表選手、女子アジア選手権代表選手・世界選手権代表候補選手、各練習パートナーを含め約100選手が参加して初の男女ナショナルチーム合同合宿が行われた。


  



 初日は午後3 時練習開始。日本協会の高田裕司専務理事(山梨学院大監督=
上右写真の右端)をはじめ各委員長からの激励に続き、和田貴広コーチ(日本協会専任コーチ)の号令でランニング(上中央写真)、レスリングの基礎練習。さらに打ち込み、パーテールボジションでの攻防、3点を奪うタックルと続き、最後は3面マットに男女の選手・コーチが混じってのスパーリングが行われた。

 浜口京子(ジャパンビバレッジ)は赤石光生コーチ(ジャパンビバレッジ)と、山本美憂(PUREBRED大宮)は和田コーチと、坂本真喜子(愛知・中京女大付高)は大橋正教コーチ(綜合警備保障監督) と、そして吉田沙保里(中京女大)は現役の田南部力(警視庁)と対戦。“レスリング王国復活”に向け、熱のこもった練習が2 時
間30分ビッシリ行われた。

男女合同合宿は5月26日まで続けられる。


 高田裕司専務理事の話「マスコミの皆さん、いかがでしたか。女子は男子との力の差を身をもって体験したことでしょう。女子のスタイル、練習方法を崩すことなく、新しい技術や考え方をプラスしてもらえればいい思います。逆に、現在は女子の方がランクが上ですから、男子は何やってるんだとハッパをかけられればいい。協会としては男子と女子の強化が1 本化され、これらはこうした機会を増やすともに、コーチの交流も頻繁に行っていきたいと思います。

 女子では鈴木光監督、栄和人コーチ、金浜良コーチが熱心に指導していますが、コーチが増えれば増えただけ別の技を教えることができる。選手はそのなかから自分にあうものを身につけていけばいいわけですから、多すぎていけないことはない。私も6月に行われる女子の強化合宿に行って指導する予定です。世界中見回しても、男子と女子がナショナルレベルでいっしょに合宿をしている国はまだないでしょう。日本は世界にさきがけいち早く合体した。先手をうったわけですから、男子も女子もさらに強くなると信じています。応援してください」


 宮原厚次コーチ(自衛隊監督)の話「レスリングがこんなに注目され、マスコミの方々が大勢集まってくれて本当にありがたい。富山英明強化委員長はアテネ・オリンピックの目標を金メダル5つと設定しましたが、不可能の数字ではないと思っています。厳しいかもしれませんが、今日見ても女子はやってくれるでしょうし、自分が担当するグレコローマンでも笹本睦(60kg級=綜合警備保障) や松本慎吾(84kg級=一宮運輸 )がかなり力をつけ、他の選手もそれに引っ張られているので必ずやってくれると信じています」


 栄和人コーチ(中京女大監督)の話「協会はすごいことを考えたなぁと思います。最初はどんな感じになるか少し心配していましたが、実際やってみてよかったと思います。ボク自身学ぶところが多かったです。自分も世界のトップ選手と戦ってきて、各国の練習メニューも取り入れたりしてやってきましたが、和田コーチの指導や選手たちの動きを見て、現在の男子のテクニック、パワー、技に入るタイミングを学ばせてもらいました。

 今、日本の女子は世界のトップに立っていますが、アテネ・オリンピックのあと、次の北京オリンピックのことを考えると、男子の体力、テクニックを持っていないと勝ち続けられないと思います。今強くても、まだまだやらなければいつ追い越されるか。満足してはいられません。また燃えてきました。今日は初日ということで女子は緊張していたみたいですが、明日からは積極的に自分から男子とスパーリングしてもらえるように行けと言いますよ」


 田南部力選手(フリー55 kg級=警視庁)の話「日大に練習に行ったとき、山本聖子選手と練習したことがあるので抵抗はなかったですね。今日は吉田沙保里選手とスパーリングしましたが、女子はいろいろなタイプの選手がいて、これなら世界のトップにいるのもわかる気がします。練習への真剣な態度や素直さなど、見習うものもありました」


 山本美憂選手(女子48kg級=PUREBRED大宮) の話「勉強になりました。和田コーチはすごい選手だったので、前から一度スパーリングさせてもらいたいと思っていたので、今日はホントよかったです(写真右)。今は自分の欠点が見えているので、それをひとつひとつ克服するよう練習しています。挑戦者、それも下の方の挑戦者ですから。

 髪を短く切ったのは、前回の合宿前に短くしたら、お猿さんみたいだったので、きのう染めてきました。赤く染めると浜ちゃん( 浜口京子) とかぶって悪いので、白って感じですかね。前から一度やってみたかったし、普通の主婦でこんな頭ではおかしいので、現役のうちにやらないと…。主人はかわいいと言ってくれました。息子はドラゴンボールみたいだといって喜んでいます」


 山本聖子(女子55kg級=ジャパンビバレッジ)の話「日大ではずっと男子と練習していましたが、ナショナルチームのトップ選手とできるのは光栄です。スパーリングを見せてもらうだけで、勉強になります。特に田南部さんのスピード、技の入り方、組み手を勉強したかったんですけど、速過ぎて目が追いつきません。久しぶりに吉田選手ともスパーリングをやりましたが(写真左)、すぐ終わっちゃったという感じです。今はとにかくやる気が出ているので、がんばります」


 坂本真喜子(女子48kg級=愛知・中京女大付高) の話「男子と練習するのは初めてだったので、緊張しました。圧倒されてしまいましたね。スパーリングをしてくれた大橋さん(写真右)に感謝しています。美憂さんとのスパーリングは五分五分でした。もっと力をつけないと勝てないので、筋トレを一生懸命やっています。次は勝てるようにがんばります」


 吉田沙保里(女子55kg級=中京女大)の話「男子のトップ選手と練習できて、とてもいい勉強になりました。いい見本がすごそばいにいるという感じです。技術、スピード全て違いますが、力は全然違っていました。田南部選手とスパーリングさせてもらいましたが、素早いし、技のキレが違います。瞬発力が凄いですよね。自分も女子では速い方だと思いますが、びっくりしました。

 女子なら1 本入ってもう1 本いけるところでも、男子は1 本行けても次は入れない。せっかくの機会なので、明日からもドンドン男子とやってみたいです。合宿中に田南部さんから1 点とるのを目標にがんばります。1 点とれたら、勝った気分でしょうね」


 伊調馨(女子63kg級=中京女大)の話「今回の合宿は楽しみとイヤだなぁというのが半分半分でした。男子とできるので期待はありましたが、合宿は辛いですから。男子にはパワーより、技術で圧倒されました。どっしりした構え、あれはぜひ取り入れたです」


 笹本睦(グレコ60kg級=綜合警備保障)の話「女子との合同合宿でしたが、グレコはスパーリングしたわけではないので、よく分かりませんね。自分のことで精いっぱいですし。世界選手権へ向けて、スタンドで得点するのは難しいので、とにかく自分から積極的に攻めていって、最初にパッシブをとることを心がけてやっています。宮原コーチに勝てれば、行けると思います。なぜかうまくやられちゃうんですよね。いやらしいというか。まだまだ本当に強いですよ、あの人は」


 浜口京子(女子72kg級=ジャパンビバレッジ)の話「勉強になりました。赤石コーチとは、私が最初に世界選手権で優勝したとき以来久しぶりスパーリングしてもらって(写真右)。浜口ジムで普段男子と練習していますが、この雰囲気でやるのとは違います。技術、体力、モチベーションの高め方、全て吸収したいと思います。対戦してみたい選手ですか? 私にはもったい方々ばかりで」


 永田克彦(グレコ74kg級=新日本プロレス職)の話「これまで女子の練習は見る機会もなかったので新鮮でした。スパーリングとか、ちょっと違うなという感じですね。男子は選手同士でガツガツやるんですが、女子はコーチがうまく引き出してやっていますよね。ボクのフリーの技術がどこまで通じるか、浜口選手とスパーリングしてみるのもいいですね。

 世界選手権、オリンピックに向けて、勝ちパターンを確立することが課題です。精神的、肉体的に追い込んで、限界より以上のものを出せるように。極限状態でどこまでやれるか。終了のブザーが鳴る最後の最後まで、諦めないでやれるか。(夏に出場予定の)ドイツ国際大会ではそれをやって、内容のある結果を出したいと思います」




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