【特集】世界選手権に挑む(14)…女子72kg級・浜口京子
2年連続5度目の世界一を目指す浜口京子は、渡米する成田空港へは髪を薄い赤色に染め、右側に「一」と剃りんだヘアで現れた。「赤は好きな色。気持ちが盛り上がる」とのことで、「一」は「1番になるため」。意外にも縁起をかつぐタイプのようだが、「今までの世界選手権の中で一番練習した。やることはすべてやった」と、努力を忘れての縁起だよりではない。
マジソン・スクエア・ガーデンは、映画で中の様子を見た。「頭の中にしっかりと焼きつけました」と言う。もちろん、そこで自分が優勝するシーンも、しっかりとインプットされているのだろう。ただ「マットに上がれば、戦うのは自分と相手だけ。場所は関係ない」とも話し、必要以上の気持ちを持たないことも心がけている。
これまでの世界選手権とは違い、9日前に現地入りして合宿して臨むこともプラスになることと言う。「時差ボケも取れるし、完全に現地での体になって試合に臨めると思います」。食事で体調を崩してはいけないので、米、味噌汁、缶詰のほか、スナック菓子など、日本での生活と変わらない状況にするための努力も忘れない。万全の状態で世界選手権のマットに上がれそうだ。
今夏は、水泳や体操、陸上で日本選手の活躍が目立った。そんな選手の活躍を見ると、「世界に対して恐れるものは何もないと思ってきます。日本人として、堂々と世界で戦おう、という気持ちになってきます」と言う。また、世界陸上の女子走り幅跳びで黒人選手が大逆転優勝したシーンも目に焼きついている。「鳥肌が立った」そうで、世界一になることの素晴らしさをあらためて感じたようだ。
米国レスリング協会のオフィシャル・ホームページに「日本スポーツ界のスーパースター。彼女を追って日本から多くの報道陣(『a
ton of Japanese media』と記されている。この『ton』は1トン、2トンの『ton』で、大きさや多さを強調するときに使う言葉)がニューヨークへ来る」と紹介された“世界のクイーン・オブ・レスラー”は、多くの人たちの期待にこたえてくれる成績を残してくれることだろう。(写真は渡米時の成田空港で、アントニオ猪木とばったり会ったところ)
○…米国協会は毎年、世選手権の前に階級ごとの優勝予想をやっている。今年の女子72kg級は11人中9人が浜口を予想。昨年、6人全員がトッカラ・モンゴメリー(米国)を予想した米国記者が、ことしはすべて浜口を予想している。
昨年の世界選手権と今年冬の欧州遠征での浜口の成績を見る限り、「アメリカ・イズ・ナンバーワン」の米国人といえども、自国選手を推すことはできないようだ。
(取材・文/樋口郁夫)
【浜口京子の最近の国際大会の成績】
《2001年》
【東アジア大会】=優勝
リーグ1回戦 ○[フォール、0:57=4-0] Lin,
Chia-Lin(台湾)
リーグ2回戦 ○[不戦勝]フォーベス・ジェシカ(豪州)
リーグ3回戦 ○[フォール、1:53=4-0] Jiang,
Xueyan(中国)
【ワールドカップ】=優勝
リーグ1回戦 ○[フォール、0:46] Gai, Fanny(フランス)
リーグ2回戦 ○[フォール、1:43] Jiang, Xueyan(中国)
リーグ3回戦 ○[フォール、0:34] Riabi, Saida(チュニジア)
リーグ4回戦 ○[フォール、0:33] Wilson,
Pamela (カナダ)
リーグ5回戦 ○[フォール、不戦勝] Macari-Montierth,
Melanie (米国)
リーグ6回戦 ○[判定] Martinenko, Svetlana
(ロシア)
【世界女子選手権】=4位
予選1回戦 ○[フォール、4:50=7-3] Komarnicka,
Tatyana (ウクライナ)
予選2回戦 BYE
予選3回戦 ○[フォール、2:28=7-0]Halova,
Katerina(チェコ)
準 決 勝 ●[1−3] Witkowska, Edyta(ポーランド)
3位決定戦 ●[フォール、3:14=0-4] Englich,
Nina(ドイツ)
《2002年》
【ショーブ女子国際大会】=優勝
予選1回戦 BYE
予選2回戦 ○[フォール、0:21=4-0] ガル・ファニー(フランス)
予選3回戦 ○[不戦勝] オフェリー・フォンタニー(フランス)
準 決 勝 ○[フォール、0:28=3-0] モヌカ・コワルスカ(ポーランド)
決 勝 ○[フォール、1:16=6-0] リアビ・サイダ(チュニジア)
【日独デュアルミート】=72kg級
ワンマッチ ○[4-3=延長] Anita Schatzle(ドイツ)
【アジア大会】=優勝
リーグ1回戦 ○[フォール、0:40=6-0] Gursharan,
Preetkaur(インド)
リーグ2回戦 BYE
リーグ3回戦 ○[フォール、1:23=6-0] Panova,
Yana(キルギスタン)
リーグ4回戦 ○[6−0] Kang, Min-Jeong(韓国)
リーグ5回戦 ○[フォール、2:07=4-0] Nazarenko,
Oleysa (トルクメニスタン)
【ワールドカップ】=優勝
リーグ1回戦 BYE
リーグ2回戦 ○[不戦勝] Komarnicka, Tatyana
(ウクライナ)
リーグ3回戦 ○[フォール、8-0] Maher, Sara
Ahmed(エジプト)
リーグ4回戦 ○[フォール、4-0] Jiang, Xueyan(中国)
リーグ5回戦 ○[フォール、3-0] Riabi, Saida(チュニジア)
リーグ6回戦 ○[3−1] Martinenko, Svetlana(ロシア)
リーグ7回戦 ●[1−4] Ohenewa, Akuffo(カナダ)
※勝ち点の関係で浜口が優勝
【世界女子選手権】=優勝
予選1回戦 BYE
予選2回戦 ○[フォール、4:07=9-0] Martinenko,
Svetlana(ロシア)
予選3回戦 ○[5−1] Unda, Maider(スペイン)
決勝T1回戦 ○[Tフォール、2:30=10-0] Ivanova,
Galina (ブルガリア)
準 決 勝 ○[4−0] Witkowska, Edyta(ポーランド)
決 勝 ○[5−1] Wang, Xu(中国)
《2003年》
【クリッパン国際大会】=優勝
予選1回戦 BYE
予選2回戦 ○[フォール] Anita Schatzle(ドイツ)
予選3回戦 ○[フォール] Cecilia Ahlenius(スウェーデン)
準々決勝 ○[フォール] Christine Nordhagen(カナダ)
準 決 勝 ○[判 定] Svetlana Martynenko(ロシア)
決 勝 ○[フォール] Monika Kowalska(ポーランド)
【ポーランド・オープン】=優勝
予選1回戦 ○[5−0] Nina Englich(ドイツ)
予選2回戦 BYE
予選3回戦 ○[4−2] Svetlana Martinenko(ロシア)
準 決 勝 ○[フォール、2:47=8-0] Katerina
Burmistrova(ウクライナ)
決 勝 ○[フォール、2:54=6-0] Anita
Schatzle(ドイツ)