グレコローマン全日本合宿終了、24日にフランスへ




 10月2日から5日にフランス・クレテイユで行なわれる世界グレコローマン選手権に向け、9月14日から東京・国立スポーツ科学センター(JISS)で国内での最終合宿をしていたグレコローマンの日本代表チームは20日、合宿を打ち上げた。

 24日にパリへ向かい、現地で調整合宿したあと、29日にパリ郊外にあるクレテイユのホテルに入る。


 「フリーがいい成績だったって? 女子のこと? え、男子? 銅メダル1個じゃないか。そんなんで、いい成績なんて言うんじゃないよ!」。

 グレコローマンの宮原厚次監督が、き然として言い放った。決してフリースタイルの選手やコーチの努力を冒とくしたのではない。時に両スタイル同時に合宿し、強化委員として、その苦労をつぶさに見てきた。池松和彦の銅メダル獲得がうれしないはずはない。しかし、グレコローマン・チームも負けてはいられない。「フリー以上の成績を残してやる」という強い決意が、冒頭の言葉だ。

 日本レスリングの伝統はフリースタイルでつくられてきたのは紛れもない事実。五輪金メダリスト20人のうち、16人がフリースタイルの選手。世界選手権も、25人のチャンピオンのうち、22人がフリースタイルだ。

 しかし最近はグレコローマンの方がいい成績を残している。2000年シドニー五輪では、8位入賞なしのフリーを横目に、永田克彦が銀メダルを獲得し、笹本睦が8位入賞。01年世界選手権でも笹本が7位、村田知也が9位に入り、全階級で予選リーグ敗退のフリーを上回った。

 昨年の世界選手こそ、フリーで田南部力が6位入賞し、その後塵を拝したが、アジア大会で金メダル獲得の伝統を復活させたのはグレコローマンだった(84kg級の松本慎吾)。今回の世界選手権でグレコがメダルなしなら、結果で負けるのみならず、実力アップの角度におい惨敗ということになる。絶対に“ライバル”には負けたくない。

 幸い、この1年間の国際大会の成績を見ると、メダルに手が届く兆候は十分にある。84kg級の松本慎吾(一宮運輸)が昨秋アジア大会を制し、年明けのデーブ・シュルツ国際大会でも優勝し勝つ味を味わっている。55kg級の豊田雅俊(警視庁)と60kg級の笹本睦(綜合警備保障)も、世界王者や欧州王者経験者を倒すなどして「優勝」を経験。名前負けすることなく実力を発揮できるたくまさしさを身につけている。

 ひとつの心配点は、この夏、ケガが多かったこと。ポーランド遠征での練習や試合でほとんどの選手がどこかを痛め、虫垂炎(盲腸)の手術でブランクのできた選手もいた。最後の追い込みの時期に、やや練習量が減ってしまったのは確かだ。

 しかし宮原監督は「言い訳にはしたくない。万全の調子で大会に出られることばかりではない」と言う。ケガをしたのは、ヨーロッパのグレコローマンの厳しさに接したからこそであり、「ケガをしてしまったが、その経験が必ず生きてくる」と前向きに考えている。

 悲壮な決意は、「メダルなしに終わった時は、(日本レスリング伝統の)頭をツルツルにするの?」という問いの答に表れている。「やるよ! 下をツルツルにな!」−。(取材・文・写真=樋口郁夫)


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