【特集】世界選手権を振り返って…日本協会会長、強化委員長




 日本協会・福田富昭会長の話「男女とも、両監督、コーチ、選手が本当によくやってくれました。大変うれしいというのが感想ですが、女子に関しては金メダル5つも取ったことで、世界を敵にまわしてしまいました。プレッシャーも厳しくなるでしょうが、それを日ごろのトレーニングに生かし、来年のアテネ五輪ででは完全に勝たないといけなくなりました。

 まだ課題もあります。一例を挙げると、私が男子の強化委員長をしていた時と同じ壁にぶち当たっていると思う点があります。正面タックルを見破られた時には横からの攻撃を入れなければならない。オリンピックでは今回のようにうまくはいかないでしょうから、横からの動きがポイントになるでしょう。

 男子もようやく光りが見えてきました。1995年以来という池松選手のメダル獲得はうれしい限りです。田南部選手が敗れた相手は今回世界チャンピオンになった。おそらく決勝で戦っても、それほど差がなかったでしょう。

 女子の場合は、オリンピックでは4階級しかないので、国内予選が大変です。私は1965年の世界選手権で優勝しましたが、68年のメキシコ五輪のための国内予選では世界チャンピオン経験者が何人もいました。今、日本の女子はそれと同じ状況です。

 次の理事会で日本代表選考方法をきちんと決めたいと思います。どの階級に挑戦するかは、本人の意思を尊重し、一発勝負ではなく何回かを対象として、それぞれ納得できる方法で選んでいきたいと思います」


 日本協会・富山英明強化委員長の話「今回は田南部がチームの核となっていたが、彼が世界チャンピオンを破ってくれたことで、全員に勢いがついた。それと女子の頑張り。同じマットで戦っていて、負けるわけにはいかないですから。お互いにいい相乗効果を生んだと思います。

 池松選手の銅メダルは本当にうれしいです。我慢して我慢して、それでも出ていかず、我慢してフェイントで相手を疲れさせ、バランスを崩して一気に攻める。理想のレスリングでしたね。今のレスリングは引き落としがポイントになりますが、和田コーチがそれをうまく、そして細かく教えてくれました。まだ経験が浅く、若い池松が取ったことが大きい。95年以来8年ぶりですね。これで一気に波に乗っていけるでしょう。

 全日本合宿を重ね、とことん追い込んでやってきたのが、小幡選手が(決勝トーナメント1回戦で延長に入るときの)最後のクリンチで1点を取るなど、ぎりぎりで生きてきました(注:この1点がなければ五輪出場資格は取れなかった)。

 シドニー五輪の前年の世界選手権で獲得できた出場枠は両スタイルで1つだった。今回はフリーだけで3つ。でも満足することなく。次のトライアルでも頑張り、アテネ五輪へつなげていきたいと思います」


 日本協会・鈴木光強化副委員長(女子強化委員長)の話「最初におわびさせていただきます。全階級金メダルという公約が達成できず申し訳ありませんでした。監督・コーチとしては、選手全員を信じていきたいという気持ちがあるので、あのように公約させていただきました。でも、5位に終わった坂本真喜子、斉藤紀江も、優勝してもおかしくない力を持っていることだけは断言します。

 今回、五輪実施の4階級で出場資格を獲得できました。オリンピックに向け、よりいっそう精進していく所存です。今回、5人の金メダリストがいながら、オリンピックには4人しかいけず、選手には過酷な国内予選が始まります。

 アメリカやロシアも強化が進んでいました。それでも、日本選手がアテネ五輪で金メダルを4つ取ってくれると信じています」

(取材・構成=いずれも宮崎俊哉)



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